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2014 Fiscal Year Research-status Report

英国歴史小説の射程―スコット『ウェイヴァリー叢書』の越境・変容と文化的交渉

Research Project

Project/Area Number 26370288
Research InstitutionAoyama Gakuin University

Principal Investigator

松井 優子  青山学院大学, 文学部, 教授 (70265445)

Project Period (FY) 2014-04-01 – 2017-03-31
Keywords英文学 / 歴史小説 / 文化史 / ウォルター・スコット
Outline of Annual Research Achievements

19世紀半ばから後期にかけての『ウェイヴァリー叢書』の各種エディションの出版状況を具体的に把握し、これら歴史小説全集への読者の一般的な期待や知的欲求を調査する土台として、英国アバディーン大学ウォルター・スコット研究所、スコットランド国立図書館において各エディションや出版関連資料の調査を実施した。スコット存命中に出版された、いわゆる「大全集」版を経て、1840年代から1870年代にかけての各種の版について、価格や装丁を中心に、豪華版や廉価版としてのそれぞれの特徴を整理するとともに、これら多種多様な形態をとることで新たな読者層を開拓、獲得しつつ、『ウェイヴァリー叢書』が19世紀半ばから末にかけてのブリテンに遍在していた実態、さらにはその販売網や読者層が植民地やアメリカ合衆国にまで及んでいた状況についての検討を進めた。
あわせて、W. Sidney Cornish, The Waverley Manual(1871)をはじめとする、19世紀末に相次いで出版された作品鑑賞や自助のための手引書を参照し、それらと『ウェイヴァリー叢書』の各エディションの註や事項索引といったパラテクストとの共通点についての分析を進めた。なかでも、これらが『ウェイヴァリー叢書』の、教養や知の情報源としての言わば百科事典的な位置づけを示唆するとともに、それが19世紀末の学校教科書の教材としての歴史小説の有用性と結びついた可能性について考察し、その一部を7月に開催された国際学会にて発表した。また、スコットの歴史小説がその読者を一定の共同体に統合しつつ、なお多様な読者の多岐に渡る欲求や複数の視点に応答する特徴を備えている点について、特に『ウェイヴァリー叢書』第一作の『ウェイヴァリー』をとりあげ、その語りの特徴と小説の読み手との関係、ジャンル横断性といった視点から分析し、論文にまとめた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成26年度に予定していた、19世紀に出版された各エディション、及び同時期に出版された手引書の調査については、調査対象となる文献の洗い出しや分類等、その概要の把握はほぼ終了している。また、これらの調査を通して、研究の次の段階への示唆も得られている状況にある。その一方、これら各エディションは多数に上り、なかには具体的な調査や参照が困難と思われるエディションや手引書が存在することも判明してきたため、その対応を検討する必要も生じてきている。

Strategy for Future Research Activity

前年度の考察をふまえ、『ウェイヴァリー叢書』の各種エディションの特徴について、参照が困難と思われるエディションについてはその一部のみの調査に切り替えるなど、対応を検討しつつ、その特徴をまとめる。あわせて、歴史小説全集の有用性が学校教育の場に接続する可能性や、それが作品の受容にもたらす影響について探るため、19世紀末の普通教育法施行以降に出版された教科書におけるスコット作品を分析する作業を進める。このため、参照が終了していない各種エディションの一部、及び、教科書版や教育関連資料について、英国にて調査、収集を実施する。
なかでも、教科書版については、世紀半ばに出版されたReadings for the Young; from the Works of Sir Walter Scott(1848 [1847])や、19世紀末の手引書とも比較しつつ、19世紀末に広く使用されていた教科書The New Royal Readers(1884)シリーズを中心として、採択作品や場面の選択、作品紹介の方法を通して、歴史小説の実用性、及び冒険・娯楽的要素が当時のナショナルな文化や帝国的知への導入の具へと変換される可能性や、それによる作品受容の変容の過程について分析をおこなう。この際、教科書に採択された他の作家、作品との関係や、挿絵など教科書版との共通性の高い要素については各種全集版での変容との関連にも留意する。また、各種エディション同様、19世紀末に出版された学校教科書はきわめて多数に上り、その性格上参照が困難なシリーズも存在することが考えられるため、具体的な分析にあたっては、その選択には慎重を期したうえで代表的出版物に調査を限定し、全体的な傾向の把握に努めることでこれに対応することも考えられる。

Causes of Carryover

主として、購入予定であった文献の出版が遅れ、購入にいたらなかったこと、また、紙媒体の複写を予定していた文献が無料の電子媒体にて入手可能だったこと等によるものである。

Expenditure Plan for Carryover Budget

昨年度出版予定であった文献の購入、資料の調査・収集のための旅費、及び文献取り寄せのための費用に充当する予定である。

  • Research Products

    (3 results)

All 2015 2014

All Presentation (2 results) Book (1 results)

  • [Presentation] Scott’s Novels in Victorian School Textbooks2014

    • Author(s)
      MATSUI Yuko
    • Organizer
      The Tenth International Scott Conference
    • Place of Presentation
      University of Aberdeen (Aberdeen, United Kingdom)
    • Year and Date
      2014-07-10
  • [Presentation] Scottish Writing in Recent Japanese Translation: Translation of Culture and Context2014

    • Author(s)
      MATSUI Yuko
    • Organizer
      World Congress of Scottish Literatures
    • Place of Presentation
      University of Glasgow (Glasgow, United Kingdom)
    • Year and Date
      2014-07-02
  • [Book] 『戦争・文学・表象――試される英語圏作家たち』2015

    • Author(s)
      松井優子、福田敬子、三枝和彦、伊達直之、大道千穂、越智博美、加藤匠、小堀洋、麻生えりか、高橋暁子、加々美成美、小室龍之介、田中裕介、富山太佳夫
    • Total Pages
      335(13-39)
    • Publisher
      音羽書房鶴見書店

URL: 

Published: 2016-05-27  

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