2016 Fiscal Year Annual Research Report
The Reception and Transformation of Walter Scott's Waverley Novels: the Historical Novel's Cultural Role and Significance in the Victorian Period
Project/Area Number |
26370288
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
松井 優子 青山学院大学, 文学部, 教授 (70265445)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 英文学 / 歴史小説 / 文化史 / ウォルター・スコット |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに参照が終了していなかった『ウェイヴァリー叢書』関連の学校教科書の一部、および派生的出版物や派生現象について大英図書館ならびにスコットランド国立図書館にて調査、収集を実施した。なかでも、作家スコットや作品の登場人物、舞台を描いた画集、それらに関する逸話集や解説書を参照し、物語中の史実や現実の土地との接点に触発された読み手が自らそのつながりを前景化するこうした試みを通じ、読者共同体の形成とともに虚構の作品世界が現実の共同体との連動を深める過程について考察した。特にこれらの文献には、舞台となった現実の土地の歴史や習俗の概説、ブリテン小説史の体裁をとった序文が付されていることも多く、『ウェイヴァリー叢書』をめぐる解説書の出版が、文化的アイデンティティの問題や小説というジャンルの発展について直接的に論じる場となっている可能性についても検討した。また、調査の過程で、これら派生的文献はきわめて多数にのぼり、なかには出版地を変えて同様のものが出版されたり、数年後に追加の挿絵を入れて再刊されたりと、類似のものも多いことがあらためて判明してきたため、それらについて大まかに分類・整理し、代表的文献に調査対象を絞るとともに、その全体的な傾向の把握に努めた。 あわせて、読者による作品の具体化や作品世界と現実世界との交渉という、歴史小説のジャンル的特徴が喚起し、上の派生的文献によって一層促進もされた重要な現象のひとつとして、スコット関連の文学観光について、旅行記や「聖地」巡礼記、旅行ガイドブック等を参照し、19世紀英語圏における文学作品の「正典」化や市民社会における文学者像、新技術との親縁性等との関連から分析した。これらの一部について所属学会シンポジウムで報告するとともに、前年度までの考察をふくめて論文にまとめる準備を進めた。
|
Research Products
(3 results)