2015 Fiscal Year Research-status Report
21世紀翻訳理論の展開と「歴史」再読についての考察
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26370294
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
早川 敦子 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (60225604)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 翻訳論 / 日本研究 / 世界文学 / 歴史再読 / 震災文学 / 哲学詩 / 第二次大戦後 / 表象研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
翻訳論の展開と歴史の再読というテーマを、二つの方向で展開した。一つは、日本文学の翻訳を、翻訳論的視点から概観し、それがどのように外国語(英語圏)を迂回して翻訳を媒介することで日本の表象を変えてきたかということをあとづける研究、またもう一つは、第二次世界大戦後の世界地図を考えていくうえで、歴史の再読がどのようなかたちで翻訳に反映されているかの実例を検証することである。 前者については、いわゆる日本研究の枠組みで翻訳論の意義を考察するテーマとして、2015年9月にロンドンで行われたBASJ(Bristish Association of Japanese Studies)の年次総会にてシンポジウムに参加、その知見をいかして、"New Translations of the Japanese Mind: Socio-Cultural Impact"(論文:Journalism and Mass Communications, 2015所収、後述業績参照)にまとめた。 後者については哲学者でもあるアメリカ在住のペンシルヴァニア州立大学教授、Emily Grosholzを招聘、20世紀を題材とする彼女の哲学詩集を題材に授業ならびに意見交換を行い、その詩集については翻訳として出版した(『こどもの時間』、2015年刊)。このほか、震災の言説化が歴史意識にどのようにリンクしてくるかを考察する資料として、福島の詩の英訳を行い、カナダのBritish Columbia大学の日本研究の専門家と意見交換を行い、また翻訳出版することを通して識者からのフィードバックを受けているところである。 このような研究をもとに、最終年度である平成28年度には、翻訳論の可能性について実例をあげて統括を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、国内外での研究発表および出版物を通して、専門家の知見を得るなどの段階をへて、予定していた研究の着地点がだいたいのところまで見通せる段階に達している。今後さらに研究書などへの寄稿、論文の執筆を予定しており、最終年度には統括できる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は研究課題の統括を行う予定である。日本文学の翻訳的課題と近代にいたる歴史の再読が翻訳論を迂回することによってなされていること、またそこを通して新たな世界文学の言説につながっていることを明らかにしたいと考えている。 また、とくに20世紀の戦争についての検証を行ってきた英語圏の作家たちの作品を通して、それが日本語に翻訳されて日本の戦後意識にも関わっていることに注目し、グローバリゼーションにおける翻訳の意義を再度確認する。とくに震災後の言説と、第二次大戦後に歴史を検証する文学との類似性にも注目し、そこから、現代注目されてきた「世界文学」の動向との関連にも触れる予定である。
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Causes of Carryover |
物品費として購入予定であったパソコンの発注がwindows10への移行などに伴い、次年度にずれこんだため。また、学外から招聘した研究者への謝金が、当該研究者独自の獲得資金により、不要となるなどの変更があった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
パソコンの購入に際しては平成28年の4月に購入、物品費に計上する。
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Research Products
(6 results)