2016 Fiscal Year Annual Research Report
Translation Studies: Perspectives in the 21st Century and Re-reading History
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26370294
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
早川 敦子 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (60225604)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 世界文学 / 歴史の検証 / 歴史の創出 / ecocriticism / 翻訳理論 / 21世紀文学の課題 / 比較文学 / 震災文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
とくに最終年度にあたっては、「歴史の再創出」と「世界文学」の二つの概念を繋げることを目的とする研究を統括するにあたり、日本の震災後の文学がいかに「翻訳」を迂回して歴史の検証と世界文学性に展開しているかに焦点を当てた。具体的な試みとして、カナダのUBC(University of British Columbia)のAsian and Japanese StudiesのProf. Christina Laffinとの協働プロジェクトを行い、3.11後に日本で発表された「震災文学」の英語の翻訳がどのように受容されているか、また、UBCの学生とのコラボレーションによる原爆詩、福島の詩(和合亮一、佐藤紫華子らの作品から選択)の英訳を行い、言葉が震災後にどのように変化しているかを文化翻訳の観点から考察、日英語双方の翻訳の作業を通して「歴史の再読」の可能性とその過程を考察した。 他方、アメリカにおける核問題の歴史の検証の例として、ハーフォードにおける核開発が環境および人体に与えてきた深刻な被害を告発する詩集[Plume]を取り上げ、日本語へのテクスト翻訳と分析を経て、アメリカの歴史を内側から解体し、負の歴史へと変換していく意識に注目して、上記日本の震災後文学との比較を行った。 その知見として、ひじょうに具体的な記録としての文学が、人類の共通の象徴的な言語表現を通して「世界文学」としての認識に展開されている21世紀的課題があることが明確になった。この文脈から、さらに、戦後の日本文学の中で「世界文学」に位置づけられた石牟礼道子の水俣文学などにも通底する要素を見出す可能性にいたり、いわゆるecocriticismの領域でそれを考察する可能性が拓かれた。 この問題は、今後CLN(世界文学語圏ネットワーク)のプロジェクトや、次の段階の科研の研究課題として追究していく予定である。
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