2018 Fiscal Year Research-status Report
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26370296
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
原田 範行 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (90265778)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近代英文学 / 日本表象 / 好奇心(curiosity) / 言説空間 / 実録 / フィクション / 旅行記 / 地図の東西交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は本研究の5年目にあたり、これまでの研究・調査においてなお不十分な部分を補いつつ、本研究の総括を進める準備を遂行した。これまでの研究は、概ね予定通り進行してきたが、次の三点において、なお追加調査と資料整理が必要であった。すなわち第一に、ジョージ・サルマナザールが『フォルモサ』を刊行した18世紀初頭(具体的には1704年から10年にかけて)の同時代資料(特に当時のロンドンで発刊された定期刊行物類)の補充調査、第二に、ジョナサン・スウィフトが1690年代に起居していたサー・ウィリアム・テンプルの当時の蔵書資料の復元に関する補充調査、第三に、このスウィフトの『ガリヴァー旅行記』に直接的な影響を与えたと推定される書籍・地図類の特定のための補充調査(すなわち、当時の日本・オランダ(および英国)間での書籍・地図類の交易品目一覧からの割り出し作業)である。これら三つの作業は、概ね、夏季休暇中に実施した英国・ロンドンの大英図書館での集中的な資料調査によって目標に達することができた。その後、本研究の総括に向けて、これまでの研究成果を検証しつつ集約する作業を進めた。その中には、ダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』続編に関する追加調査も含まれている。(すなわち、デフォーの蔵書目録の再点検と、この『ロビンソン・クルーソー』続編が対象としている日本以外のアジア諸地域の情報の入手経路の特定、である。)また、研究初年度および2年目に調査し整理した、18世紀初頭のイギリスにおける日本表象の事例を再吟味し、体系的な文化考察を進めた。その成果の一部は、2019年度に英語論文として刊行される予定である。以上の経緯により、本研究の総括をする態勢はほぼ整ったと言えるが、成果の最終的な発表へ向けての精査と海外の研究者との意見交換などに万全を期すべく、研究期間を1年延長することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、2014年度から5年の研究期間を想定し、2018年度に至るまで概ね順調に推移したと言える。すなわち、初年度には、17世紀後半から18世紀初頭にかけてのイギリスにおける日本表象に関する体系的資料調査とその文化史的考察への準備、2年目から3年目にかけては、ジョージ・サルマナザールの『フォルモサ』、ダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』続編、ジョナサン・スウィフトの『ガリヴァー旅行記』を中心とした本格的な日本表象作品の分析と作家の伝記的事実に関する調査(特に蔵書資料などについて)、4年目は、特に書籍や地図類などの交易状況を調査し、そこから日本表象が生じた素材や背景事情に関する分析をおこなうこと、そして最終年度は、研究の総括と最終的な研究成果の公表、というものである。2018年度の研究については「研究実績の概要」に詳述した通りであるが、研究の総括にあたり、なお三つの追加的な調査を必要とした。(すなわち、18世紀初頭の同時代資料の補充調査、第二に、サー・ウィリアム・テンプルの当時の蔵書資料の復元に関する補充調査、第三に、『ガリヴァー旅行記』に直接的な影響を与えたと推定される書籍・地図類の特定のための補充調査)である。これらを踏まえて2018年度後半には研究の総括のための準備に入り、研究成果を全体的に吟味する作業を進めた。その中では、研究初年度および2年目に調査した、18世紀初頭のイギリスにおける日本表象の事例を再吟味し、体系的な文化考察を進めた。また、デフォーの『ロビンソン・クルーソー』続編に関する追加的調査もおこなった。以上の通り、本研究の総括のための態勢はほぼ予定通り整ったと言えるが、成果の最終的な発表へ向けての精査や吟味、海外の研究者との意見交換などに万全を期すべく、また2018年度の本務校役職(現代教養学部長)を考量し、研究期間を1年延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「研究実績の概要」および「現在までの進捗状況」において詳述した通り、本研究は、これまで概ね予定通り進行し、現在は研究の総括を進めてその成果を公表するという段階に至っている。2018年度には、本務校役職(現代教養学部長)を勘案して研究期間の1年延長を申請したが、この点は、2019年度においては特に問題はない。2019年度が本研究の最終年度ということになるが、実施すべき具体的な内容は、次の三つである。すなわち、第一に、これまでに収集した資料およびその分析成果を改めて整理・吟味し、それらを体系的に記述するということである。こうした記述の一部は、既に、2019年度に刊行予定の英語論文などにもまとめられているが、特に2018年度に実施した補充調査の分析と整理を徹底させ、最終的な研究成果に盛り込む予定である。2019年の具体的な内容の第二は、研究成果を総括するにあたって、内外の専門家との意見交換や情報交換の機会を設ける、ということである。具体的には、本研究の成果に特化した個別シンポジウムを開催し、その場でのディスカッションや情報交換を積極的に研究成果に取り込む、ということである。2019年度の具体的な内容の第三は、研究成果の公開手段として、論文、著書の刊行と同時に、専用のウェッブサイトを制作・公開するということがある。論文、著書の刊行については、すでに準備作業が進行中であり、研究成果の十分な発信が可能である。また、専用のウェッブサイトについても、基本的な構成や内容はほぼ定まっており、2019年度においては、改めて内容の吟味を行うことが中心的な作業となる。なお、上記の主に三つの研究内容は、すべて、すでに2018年度においてある程度準備が進められてきたものであり、そのための必要経費等は、当初の予定通りに執行される。したがって、補助金の費目等に変更が発生することはない。
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Causes of Carryover |
上記の通り、次年度使用額が発生したが、これは、2018年度において、研究の総括や成果の公表の準備を進める過程で、なお、資料の吟味や内容の精査を進めていたため、研究成果公表のためのウェブサイト作成や国内外の専門家との意見交換や情報交換等にかかわる費用(謝金や資料整理のための人件費や雑費など)が未支出となったことによる。これらについては、すでにある程度の準備が2018年度中に進められており、2019年度にあっては、上記次年度使用額の執行により、研究成果の総括と研究成果の公表が順調に進められる予定である。なお、2018年度にあっては、本務校役職(現代教養学部長)による校務負担を考量して研究期間を1年延長することを申請して認められたが、2019年度にあっては、この学務負担は解消しており、研究のためのエフォート率等も当初予定した水準を十分に確保できるので、研究の進捗と予算の執行に遅滞が発生することはない。
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Research Products
(8 results)