2016 Fiscal Year Research-status Report
ボーダレスな知的財産への道:グローバル文化・文学の共生ディスコースを探る
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26370301
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
臼井 雅美 同志社大学, 文学部, 教授 (00223537)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 英語圏文学 / 英語圏文化 / グローバリズム / 震災文学 / 宗教学 / 科学 / 政治学 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
20世紀から21世紀にわたって発表された文学作品と社会の近代化から21世紀にかけて起こった帝国主義と植民地主義からグローバリズムとポストコロニアリズムという歴史的変遷との相関関係を、主に科学、宗教学、政治学、経済という観点から考察し、論文を発表することができた。 日系カナダ人作家ルース・オゼキの作品を環境学と宗教学的視点から論じた論文は、英語圏文学に関する論文集である共著に収められた。また、北米以外で初めてヨーロッパで開催されたModern Language AssociationのInternational Symposiumにおいて北米から東欧、アジアに渡って構築されつつある破壊をテーマとした文学に関して論文を発表した。 またテロの脅威を示唆して発表されたカズオ・イシグロの作品、Joseph O’Neillのグルーバル都市を舞台とした作品群、アジアネットワーク構築が根底にある陳舜臣の推理小説群、優生学への抗議が埋めこまれたイシグロと津島佑子の作品に関して、パリ、シンガポール、マレーシア、オーストラリアにおいて開催された国際学会で口頭発表をした。その中でイシグロ、O’Neill、津島に関する論文はそれぞれの学会誌に掲載された。 最後に、遠藤周作と津島佑子の作品に関して宗教学的視点から論じた論文を、オックスフォード大学主催のOxford International Symposiumにおいて口頭発表した。この論文に関しては、構築された歴史の中で埋もれてきた声を、17世紀から現代に渡り世界観を変えてきた帝国主義と植民地主義からポストコロニアリズムへの流れの中に再生させるという壮大なテーマと捉え、21世紀の破壊的社会との関連を論じ、活発な意見交換を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、世界的に権威があるMLA International Symposium とOxford Symposium on Religious Studiesにおいて口頭発表し、文学という枠を超えて学際的研究を多くの研究者と共有することができたことが最も大きな進展であった。どちらの学会でも日本人発表者は私一人であり、MLAの際にはドイツ在住の日本人作家多和田葉子氏と二人であった。また、昨年度までと同様に、欧米だけでなく、アジア・オセアニアにおいて研究発表をすることができ、学際的研究の幅と様々なバックグランドを持つ研究者と交流をすることができた。 出版においても、日本の大学生や研究者だけでなく一般読者にもわかりやすく執筆した共著の出版と、インターネット等でも公開され主要研究出版として論文検索ボーダルにリストアップされている国際ジャーナルへの掲載も可能となったことも大きな成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年9月には台湾の高雄で開催予定のInternational Conference on Life Writingにおいて文学と女性作家を文化とジェンダー論を中心に口頭発表することが決定しており、2016年度に引き続き国際学会において活発に論文を発表していく予定である。また、昨年度国際学会で口頭発表した論文で未出版の論文を出版することに力を注ぎたい。 特に、Oxford Symposiumにおいて発表した論文を発展させ、現代文学においていかに時代が再構築されているか、またそれによって新たな文学上の地図が作られているかを考察していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
最後の学会発表が3月中旬であったため、正確に実行されず、少額であるが差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分として請求した助成金と共に、消耗品に使用する計画である。
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Research Products
(10 results)