2015 Fiscal Year Research-status Report
島嶼からとらえるアメリカ文学ー孤立主義のレトリック再考
Project/Area Number |
26370324
|
Research Institution | Wayo Women's University |
Principal Investigator |
佐久間 みかよ 和洋女子大学, 人文社会科学系, 教授 (00327181)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 島嶼 / アメリカ / エマソン / 帝国主義 / ハワイ / 孤立主義 / コスモポリタニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
アメリカ合衆国の外交政策が孤立主義的傾向から帝国的拡大へと転換する際に顕著になる地域による反応の違いを昨年度研究したが、その際レトリックとして強調される「個性」あるいは「キャラクター」が文学者の間で重要性をもって流布することが確認できた。これらの語の意味が果たしてどのようなニュアンスで理解されていたかについての研究に発展させた。「個性」「キャラクター」の重視はアメリカ文化のなかではともすると反知性主義と結びつきアメリカ文化の一側面を表すとされるが、これらの語の持つ意味について再考するためエマソンのエッセイを中心に研究した。孤立と個性の相互関係、そしてアメリカ的個性の持つ意味と当時の帝国的拡大についてのレトリカルな近似性を研究した。この結果を第10回国際メルヴィル会議、成蹊大学研究会、および駒場英語圏研究会で口頭発表を行った。また資料調査のため8月にボストン・ニューヨークに出張し、ハーバード大のホール教授から研究の助言を受け、2016年度に東京で研究会を開くことができるよう打ち合わせを行った。昨年度の研究結果を和洋女子大学紀要に論文としてまとめ発表した。 これらの研究から新たにわかった個性のレトリックと帝国的拡大の関連を地政学的に研究するため2月にはハワイに行き調査を行った。ハワイの発展におけるニューイングランドの牧師層が果たした役割とハワイ諸島おける帝国内帝国の進展の関連を研究し、研究最終年度における島嶼の持つ意味の再考につなげていく準備をした。また、UCLAのコラカチオ教授からも助言を受け、その際の原稿依頼により書いたエッセイが、 A Passion for Getting It Right: Essays and Appreciations in Honor of Michael J. Colacurcio's 50 Years of Teachingの中に収録された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第10回国際メルヴィル会議および、「マニフェスト・デスティニーの情動的効果と21世紀的惑星的想像力」研究会、駒場英語圏研究会での発表に際して多くの知見が得られた。これらの発表の時に行った孤立主義のレトリックを吟味する過程で浮かび上がった「キャラクター」という概念の意味の不安定さはアメリカ例外主義、あるいは孤立主義と関連づけて論じることができる。これらキャラクターに関する考察から、島嶼のもつレトリックに新しい解釈を加えることができると思われる。本年はアメリカ人研究者との連絡もとりつつ研究会の準備を行えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
19世紀アメリカの文化状況について孤立主義的レトリックによる考察を進めることができたので、今後は具体的に島嶼がレトリックとしてどのように機能しているかを本年度調査したハワイを中心にして、アメリカ的孤立主義の特徴をキャラクターとして提示していきたい。ハワイという島嶼で孤立主義はどのように機能しているか考察し、太平洋地域に対する合衆国の孤立主義の意味の変容として研究をまとめていきたい。2016年度に招聘を予定しているアメリカ人学者とも日程調整をおこなって研究会で意見を交換する予定である。2016年度が研究最終年度となるので、孤立主義から帝国主義へと変容する過程で現れるキャラクーという概念とハワイを中心にした帝国内帝国を支えるレトリックを吟味することで、これらの関連性をまとめていきたい。
|
Causes of Carryover |
本年度招聘予定のハーヴァード大学のホール教授の来日予定が次年度になったため、その分をくり越したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
ホール教授は2016年10月に来日予定であるので、研究会の開催を計画しておりその招聘費用(謝金など)に使用する予定である。
|
Research Products
(5 results)