2017 Fiscal Year Annual Research Report
American Literature through Islands: Rethinking Rhetoric of American Isolationism
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26370324
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Research Institution | Wayo Women's University |
Principal Investigator |
佐久間 みかよ 和洋女子大学, 人文社会科学系, 教授 (00327181)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アメリカン・ルネサンス / 島嶼 / 拡張主義 / 孤立主義 / ソロー / メルヴィル / エマソン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は期間を延長した課題の最終年にあたり、その成果を海外での学会発表と論文としてまとめることができた。2017年6月ロンドンで開かれたメルヴィル国際学会で、メルヴィルのハワイ体験に焦点を当て『タイピー』の削除部分について考察した。メルヴィルはハワイでイギリス領事関係の仕事をし、ハワイにおけるアメリカの活動をイギリス側から見る経験をした。帰国し、ハワイに関する記事を読み、ハワイで起こった事件に関して、アメリカ側からの見方に改竄していると感じた。『タイピー』に「補遺」を付し、この一件の経緯を記した。しかし、アメリカでの出版に際し、書き直しを求められこの部分を削除した。こうした編集の問題は、作家のauthorshipの問題であると同時に、アメリカの報道の在り方をあきらかにするものである。『タイピー』の一部削除にいたる経過は、イギリス版とアメリカ版の違いという、トランスアトランティックな対抗関係の焦点が、太平洋上の島ハワイに及んでいることを示している。 そもそもハワイに焦点が当たるのは、1840年代にすでにアメリカの西漸運動が太平洋上に及ぼうとすることを意味する。『タイピー』の原稿段階の「補遺」の記述は、メルヴィルがアメリカの拡張主義に反対している証左となる。同時期の作家たちも拡張主義には反対の立場をとり、当時のジャーナリズムの喧伝する拡張主義の標語「マニフェスト・デスティニー」には疑問を呈する。これらの拡張主義に反対する姿勢のレトリックをたどると、独立革命期の孤立主義にまで行くつくことを辿っていった。アメリカ国民文学成立期における孤立主義的傾向とアメリカの拡張主義との対抗関係を「島」を舞台にした作家たちの記述に探った。この成果をソローにおける孤立主義の系譜についての考察としてまとめ、ソロー学会の学会誌に論文として発表した。
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Research Products
(5 results)