2014 Fiscal Year Research-status Report
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26370328
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大串 尚代 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (70327683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下河辺 美知子 成蹊大学, 文学部, 教授 (20171001)
新田 啓子 立教大学, 文学部, 教授 (40323737)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アメリカ西部 / マイノリティと移動 / 半球 / 群島 / 海洋移動 / 女性のモビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本共同研究一年目にあたる平成26年度は、研究代表者・研究分担者それぞれが研究計画に基づき個別の研究および発表を行った。 大串尚代は平成26年度の研究として、19世紀中葉からはじまるアメリカの西漸運動について、当時の女性作家らがどのように受け止めていたのかを調査・考察した。リディア・マリア・チャイルド、マーガレット・フラー、キャサリン・マリア・セジウィックら著作品を分析し、拡張主義とは異なる視点からみた西部を考察し、その研究成果の一部を口頭発表のかたちで発表した。 新田啓子はマイノリティの移動に焦点を合わせ、移動に伴う暴力的経験ならびに「強制移住」や「隔離」等、権力による操作という移動のパラメーターの概念整理を終了した。年度前半においては、米国イェール大学にて在外研究に専念できたため、20世紀におけるアフリカ系アメリカ人と韓国系アメリカ人の動向に関する様々な史料を収集することができた。韓国系アメリカ人の経験については、アジア系アメリカ研究会会誌上に発表した。 下河辺美知子は、初年度である平成26年度は、海上のモビリティについての精神的・文化的意味を探求した。ことに、19世紀作家エドガー・アラン・ポーの長編小説に描かれた航海が、グローブ(球体)としての地球を意識した軌跡を示していることを追求し、19世紀当時のアメリカの地勢図とからめて、国内外で2つの研究発表をおこなった。また、2015年3月に出版した『グローバリゼションと惑星的想像力』には、21世紀までのグローバルな移動についての考察が含まれている。 年度末には、三名でハワイにあるイースト・ウエスト・センターおよびハワイ大学マノア校ハミルトン図書館で資料収集にあたった。大串はアメリカ政府文書のアーカイヴにて資料調査を、また新田はアジア系移住民における武術文化に関する資料調査を行い、下河辺は海洋関係の文献の資料調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本共同研究は、研究代表者・研究分担者が本共同研究開始以前より培ってきた研究領域を発展させるものであるため、個別の研究の進捗状況はおおむね順調であると思われる。また、研究者間の連絡も密に行っており、相互に協力し合って研究を行っていることが大きな理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、共同研究二年目の27年度は、1) 前年度の研究の見直し、共同研究の方向性を再検討し、2) 個人研究および資料収集、3)研究報告会(年2回程度)を行う。大串の個人研究としては、主に19世紀から20世紀のアメリカ大衆文学・児童文学における西部と女性の表象が、第二次大戦後の日本少女文化に与えた影響を考察する。新田は主として概念構築と資料調査に費やした初年度の基礎的蓄積を踏まえ、平成27年度以降については、具体的文学作品や歴史的モメントに照準を合わせた主題研究の執筆を進める。とりわけ、南北戦争後のアメリカの西部への膨張と、解放奴隷の植民をめぐる政治の解明に力点を置く予定である。下河辺は引き続き海洋移動に着目し、ハーマン・メルヴィルの一連の海洋小説における「移動」の意義を再検討する。これらの研究について、年2回の研究報告会で発表する予定にしている。
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Causes of Carryover |
26年度は250,219円の次年度使用額が生じたが、内訳としては大串分219円、新田分が250,000円である。大串分については、物品費の執行時に残金ちょうどの使用ができず、次年度に使用することにしたものである。新田分については、新田の本務校である立教大学では、旅費を実費精算しなくてはならないという規則がある。平成27年3月23~27日におけるハワイ出張の予算執行がすべて次年度に見送られることになったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
大串分219円については、27年度に使用予定である。新田分250,000円については、すべて上記の旅費としてすみやかに精算処理が行われる予定にである。
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Research Products
(7 results)