2015 Fiscal Year Research-status Report
世紀転換期「エキゾチック」への眼差しをめぐる英語の言説研究:イタリアから日本へ
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26370333
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
北原 妙子 東洋大学, 文学部, 教授 (90315820)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エキゾチック / ヘンリー・ジェイムズ / イタリア / 旅行文学 / 日本文化・日本人 / 英語圏文学 / 明治期日本 / ジャポニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本についての旅行記、滞在記、また日本を舞台にする小説などの言説に着目し、ジャンルを超え英語で描き出される日本像を検証、20世紀への転換期に、どのような日本・日本人観が流通したか明らかにすることを目的とする。広義の英語圏文学研究として「日本」をめぐる文化的交渉の議論を活発化し、新たな知見を提供することが期待できる。 第2年目にあたる今年度は前年度からのイタリア表象についての考察を深化させた。「ネイションと文学」という研究会でヘンリー・ジェイムズのイタリア旅行記について「西洋におけるエキゾティック表象」と題した報告を行い、元来炙り出そうとしていた西洋の中での異国趣味の対象、イタリア、といった観点に加え、作家のクィアー性が、イタリアの中でも生命の根源のような深南部に対峙できない可能性と結び付くことを見出した。 同時に「日本についてのノンフィクション研究」を進めた。ラザフォード・オールコック、アーネスト・サトウならびにイザベラ・バードの日本滞在記を検証。前者二名が男性外交官、後者は民間人女性旅行者という立場の違いはあるものの、文体や語り口はそれぞれに個性があり無味乾燥な記録ではない。文章の中で外交、文化(オールコック)、歴史、社会(サトウ)、庶民生活(バード)など強調点は各自で異なる一方、富士山や日本女性など共通して着目する項目もある。異文化趣味的な視線も交じるが、概して日本文化の美点を見出し、国民への敬意や愛情を持った言説は、帝国主義的支配や所有の眼差を突き抜けている。これらは明治期の日本を知る史料でもあるが、ノンフィクションの体を取りつつ、三名が日本について読み継がれる「物語」を編み出していた点が実に興味深いと分かった。それが実際のフィクションで描かれる日本や日本人の姿と比較するとどうなるかを次年度を引き続き探っていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
オールコック、サトウならびにバードに関する二次文献が予想より多く見つかり、精査が進まなかったことによる。バードについては国内でシンポジウムも行われていた様子なので、現在進行形の研究成果も視野に入れつつ、今後の考察を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2年次予定の日本についてのノンフィクションに関する二次文献を読破する。同時に日本に関するフィクションについて、小泉八雲の代表的な物語はテクストを読了しているので、メアリー・フレイザーについてテクストを精読し、問題点を洗い出す。両作家を比較考察の上、総合的に日本・日本人像がノンフィクションとフィクションでどう異なるか考察の仕上げ段階に入る。視覚資料も活用するため、横浜開港資料館、浮世絵美術展などを訪問予定。
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Causes of Carryover |
海外調査の旅費が使用できなかったことが大きな原因である。最終年度に小泉八雲関連の国内調査を予定していたが、主要目的地である小泉八雲記念館が2016年より半年間改修工事のため閉館となる。やむなく予定を前倒しして、先に国内調査をすませた都合、長期休みを用いた海外での資料調査の実施する時間調整が難しくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
夏季休暇を利用し、不足している文献調査、資料収集に赴きたい。
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