2017 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of the Discourse of the "Exotic"in English at the Turn of the 20th Century: From Italy to Japan
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26370333
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
北原 妙子 東洋大学, 文学部, 教授 (90315820)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エキゾチック / 明治期日本滞在記 / イタリア旅行記 / ジャポニズム小説 / ヘンリー・ジェイムズ / メアリー・クロフォード・フレイザー / ラフカディオ・ハーン / 英国外交官 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本についての旅行記、滞在記、また日本を舞台とする小説などの言説に着目し、ジャンルを超えて英語で描き出される日本像を検証し、20世紀への転換期にどのような日本・日本人像が流通したか明らかにすることを目的とする。近年注目を集める「旅行文学」全般の研究に資すると同時に、広義の英語圏文学研究として「日本」をめぐる文化的交渉の議論を活発化し、新たな知見を提供することが期待できる。 最終年度にあたる2017年は、日本についてのフィクションの研究を進め、代表的な作家としてラフカディオ・ハーンとメアリー・クロフォード・フレイザーを検証した。同時代の明治期に創作活動をしていたにもかかわらず、ハーンが再話文学の形で近代化以前の素朴な日本や日本人の姿を理想と提示するのに対し、フレイザーは『蝶々夫人』に代表されるような日本人女性が「遺棄される」ジャポニズム小説に反駁するかのような物語を展開した。同じ日本・日本人を対象としても全く異なる創作世界となっている。ハーンを射程に入れつつ、これまでほとんど検証されてこなかったフレイザーが、「ジャポニズム小説」というジャンルを新たに拡大した様子を第90回日本英文学会全国大会で口頭報告する予定だ。 一方、本研究の副題「イタリアから日本へ」を例証する形で、ヘンリー・ジェイムズのイタリア旅行記とイザベラ・バードの日本滞在記を比較し、第7回ヘンリー・ジェイムズ国際学会で口頭報告を行った。ここでは、「エキゾチックな」イタリア及び日本という場においては、旅行者の立ち位置や深層意識、時代のイデオロギーが図らずも露呈されることが比較考察から分かった。 また日本表象において富士山、芸者、侍などのステレオタイプ的記号が旅行記・フィクション共に描かれるが、特にフィクションを通じ、そうしたステレオタイプを超越する新たな日本・日本人像が創出されていたことが見出せた。
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