2015 Fiscal Year Research-status Report
トニ・モリスンと多文化時代の越境するアメリカ文学・文化
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26370337
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
森 あおい 明治学院大学, 国際学部, 教授 (50299286)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / トニ・モリスン / 国際情報交換 / 人種 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、19世紀アメリカ文学の全盛期の中核となったアメリカン・ルネサンスの多文化的な解釈を視野に入れて、トニ・モリスンの文学批評『白さと想像力』を読み直し、白人中心のキャノンの見直しを行なった。その成果として、研究論文「闇が語るもの―トニ・モリスンの『白さと想像力』と『ジャズ』を中心に―」を執筆した。この論文は、平成28年度末に出版される予定のトニ・モリスンの研究書『知られざるモリスン』(仮題)に収録される予定である。 平成27年5月22日には、ボストンで開催された第26回アメリカ学会(American Literature Association)の年次大会のトニ・モリスンのパネルで、”Reexamining Representation of Whiteness in Toni Morrison's Desdemona”という演題で研究発表を行った。質疑応答ではモリスンの研究者との貴重な意見交換の時間を持つことができた。 平成27年10月には、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で上演されたモリスンの戯曲『デズデモーナ』を観劇した。実際にモリスンの作品を舞台で見ることで、モリスンの試みる活字を越えたマルチメディアの可能性を自分の目と耳で確認することができた。 また、本年度は、ヴァレリー・スミス(Valerie Smith)著のトニ・モリスンに関する研究書、『トニ・モリスン 寓意と創造の文学』(Toni Morrison: Writing the Moral Imagination)の翻訳(共著)を完成させた。翻訳にあたって、訳注を付ける必要があり、他の論文のリサーチを行う必要があったが、そうすることで、モリスンの作品の背後に織り込まれているアフリカ系アメリカ人の主体性回復の物語がより明確になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科研費申請時の研究計画では平成27年度の夏休みにワシントンDCおよびニューヨークで研究調査を行う予定であったが、平成27年5月にボストンで開催されたAmerican Literature Associationで研究発表を行うことになったため、海外旅費を学会出張に当てた。そのため、当初予定していた夏休みの研究調査はできなかったが、American Literature Associationでは、海外研究協力者のキャロリン・デナード教授と意見交換を行い、研究テーマを深めることができた。なお、論文の執筆については、当初の予定通り進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は『デズデモーナ』に関する研究をさらに進め、モリスンが文学を越えた舞台で視覚的に訴えるテーマについて考察する。『デズデモーナ』は、シェイクスピアの戯曲『オセロ』に対する応答で、デズデモーナとそのアフリカ出身の子守役のバーバリーの関係を中心に据えたものである。本年度の研究では、近年のホワイトネス・スタディーズの視点から、近代以降に構築された白人優位のヒエラルキーの恣意性を検証する。 本年度は、本研究の最終年にあたるため、研究成果の公表にも重きを置く予定である。口頭発表としては、中部アメリカ文学会からの依頼を受けて、6月18日に愛知大学で開催される中部アメリカ文学会例会において、『デズデモーナ』について発表をする予定でる。 論文2編の執筆も進めており、1編は「トニ・モリスンの『デズデモーナ』におけるホワイトネス表象の見直し」というタイトルで、明治学院大学国際学部紀要『国際学研究』50号の特集「マイノリティの視点から」に投稿する予定である。もう1編は、「闇が語るもの―トニ・モリスンの『白さと想像力』と『ジャズ』を中心に―」というタイトルで、今年度南雲堂から出版される予定のトニ・モリスンに関する研究書『知られざるモリスン』(仮題)に収録されることになっており、すでに論文を提出している。この研究書出版に際しては、編集委員の一人として関わることになっている。 7月末には米国ニューヨーク・シティで開催されるトニ・モリスン協会主催の会、”Toni Morrison and Her Role as Editor”に出席の予定である。この学会には、モリスン研究者が数多く出席することになっており、論文のテーマについての意見交換をする予定である。
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