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2014 Fiscal Year Research-status Report

「正義の暴力」と文学的想像力――近現代アメリカにおける私的権力の批判的考察

Research Project

Project/Area Number 26370338
Research InstitutionRikkyo University

Principal Investigator

新田 啓子  立教大学, 文学部, 教授 (40323737)

Project Period (FY) 2014-04-01 – 2018-03-31
Keywordsアメリカ合衆国 / 自警主義 / 名誉 / 暴力 / 人種主義 / 奴隷制度 / 移民 / 暴動
Outline of Annual Research Achievements

平成26年度には、 1. 米国において「正義の暴力」として正当化されてきた私的暴力の歴史的・地理的文脈の完全な把握とならび、2. 文学者がそれをどう捉え、彼らの作品の中でいかに問題化したかを明らかにするための作品分析を開始した。とりわけ年度中盤までは、米国イェール大学客員研究員の任にあったことから、それを活かした集中的なアーカイヴ調査を実行した。特に同大バイネキー稀覯図書館とスターリング記念図書館において、南北戦争後の所謂再建期における自警団活動と、それらを取り締まるDepartment of the SouthならびにFreedmen's Bureauの攻防を示す文書を閲覧・解析した。この調査により、奴隷制を争点とし、その遺産として特に南部諸州に定着することとなった暴力をめぐる歴史的背景と、そのような行為の合理化の論理が明らかとなった。
他方、年度前半より、当初の研究計画と問題設定の妥当性を広く検証し、必要があれば軌道修正を行うために、予備成果報告とも呼べる口頭発表を三つの学会で行った。まず2014年5月のAmerican Literature Associationでは、Stephen Craneによる_The Red Badge of Courage_を題材に「名誉」や自尊感情が惹き起こす暴力の問題を議論した。次に2014年7月のAssociation for Cultural Studies年次大会においては、現代アジア映画における恥と名誉の表象論をまとめ、名誉を審美化して描く傾向が、作品の暴力への批判意識を希薄化させる傾向を明らかにした。さらに2014年9月のAsian American Literature Association 25周年記念シンポジウムにおいては、アジア系マイノリティ文学における暴動や抵抗表象を思考するうえでの理論的な枠組みについて議論した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

年度の前半が在外研究期間にあたっていたため、当初予定したすべての資料調査と成果公開を終えることができた。特にアーカイヴ調査では、これまでアクセスできなかった北軍の南部占領政策と、駐留中の自警暴力への取り組みがわかる史料を仔細に検討することができたので、基礎研究においては予想以上の進展が図られたと言ってよいかと思う。もっとも一方で、まだ初年度にすぎない本研究においては、多くの論文成果をあげるということはできず、口頭発表を3回行うほか、共著書への分担執筆を行うにとどまった。しかしながら、2014年度の中間的成果はすべて、2015年度中に論文として出版されることが確定しているため、大局的な進展そのものとしては、順調という自己評価を下してよいものと思う。

Strategy for Future Research Activity

本研究では、1850年代から1970年代までのアメリカ文学・文化作品に表れた暴力表象をまとめるにあたり、William Culbersonが通史研究_Vigilantism: Political History of Private Power in America_ (1990)で範型化した歴史的区分に基づくことにしていた。具体的には、26年度~27年度前半期までを1850年代に始まる19世紀文献の整理、27年度後半期~28年度までを1970年代に至る20世紀文献の整理にあてるものと計画してきた。
27年度は、初年度より続けてきた19世紀から20世紀への移行期のまとめならびに概念構築を進めることになるが、在外研究時に重点的に行った資料調査の分析を、その実施時に詳しく記録したテーマ別のリサーチノートと照らし合わせつつ行いたい。その過程上において、次々と明らかになるだろう文献の意義を正確に把捉し、作品研究と照合しながら、可能な限り直接的に論文執筆に活かしていきたい。また、次年度からは、基礎的な文献整理から見出された諸概念枠組を用い、「正義の暴力」が投影する問題点を様々な角度から捉え、そのパースペクティヴの有効性と多義性を実質的に確認したい。その代表的な例の一つに、1980年代以降人口に膾炙した「ヘイトクライム」というコンセプトがある。これは、当初私が「革新主義期の自警暴力」というタームで捉えていた、都市における人種偏見と自衛志向と重なると目される。このため、今後は新たにこの切り口を用いることにより、一連の暴力とアメリカ社会、さらには日本社会との関係を比較学的に見極めることを目指したい。そうすることで、本研究の現代的意義が、さらに具体的に示され得るものと思われる。

Causes of Carryover

購入した図書の金額が当初目論見より安価であり、かつ3月下旬に入って納入された物品があったため、予算執行の一部が2015年度に持ち越されることになり、残額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

次年度使用額96,787円は、主として図書の購入に充てる。2015年4月以降、速やかに予算執行の手続きをしたい。

  • Research Products

    (4 results)

All 2015 2014

All Presentation (3 results) (of which Invited: 1 results) Book (1 results)

  • [Presentation] Ethical Globality: Tracing the Theme of Reconciliation in the Age of the "Transnational Turn"2014

    • Author(s)
      Keiko NITTA
    • Organizer
      Asian American Literature Association 25th Anniversary Forum
    • Place of Presentation
      京都府京都市 京都外国語大学
    • Year and Date
      2014-09-28 – 2014-09-28
    • Invited
  • [Presentation] “Beautiful Vengeance: Martial Arts Films a-la-mode and the Aestheticized Ethicized Contest”2014

    • Author(s)
      Keiko NITTA
    • Organizer
      Association for Cultural Studies, Crossroads 2014
    • Place of Presentation
      University of Tampere, Tampere, Finland
    • Year and Date
      2014-07-03 – 2014-07-03
  • [Presentation] “‘A Spector of Reproach’: Revisiting Figures of Shame in _The Red Badge of Courage_.”2014

    • Author(s)
      Keiko NITTA
    • Organizer
      American Literature Association
    • Place of Presentation
      Hyatt Regency Washington on Capitol Hill. District of Columbia, USA
    • Year and Date
      2014-05-23 – 2014-05-23
  • [Book] 抵抗することばーー暴力と文学的想像力2015

    • Author(s)
      藤平育子、高尾直知、舌津智之編著。以下15名分担執筆。丹羽隆昭、新田啓子、諏訪部浩一、渡辺信二、田中久男、 花岡秀、若島正、長畑明利、 中尾秀博、田辺千景、篠目清美、オニキ・ユウジ、後藤和彦、平石貴樹、千石英世。
    • Total Pages
      368pp.(57-75)
    • Publisher
      南雲堂

URL: 

Published: 2016-05-27  

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