2017 Fiscal Year Research-status Report
現代オーストラリア演劇の中のグローバリズムと多文化主義
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26370340
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
澤田 敬司 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (50247269)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 先住民 / 移民 / 多文化主義 / 演劇 / レイシズム / サスティナビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
オーストラリアの多文化状況の根幹にある先住民の演劇について、研究成果をまとめ以下の単著として出版した。『オーストラリア先住民とパフォーマンス』東京大学出版会、2017年。またこの成果をもとに、日本英文学会での発表(2017年5月)などを通して、他の研究者との活発な意見交換を行った。さらに、同書を通して日本に初めて紹介した代表的先住民演劇「ジャック・チャールズvs王冠」が、「ふじのくに せかい演劇祭」で来日公演を行うこととなり、SPAC静岡県舞台芸術センターと協議しながら、字幕翻訳など日本上演の準備作業を進めた。 オーストラリアの日系移民の物語を描く『ヤスキチ・ムラカミ』について、作者マユ・カナモリと意見交換を行いながらテクストの日本語化を行い、また演出家・和田喜夫と意見交換しながら日本での上演の準備作業を進めた。 多文化状況におけるレイシズムの問題を扱った古典的オーストラリア戯曲『ノームとアーメッド』が調布市せんがわ劇場で日本初演された(2017年2月)。同作品の翻訳者として、せんがわ劇場の主催者、同上演の演出家、出演者たちと活発な意見交換を行いながら舞台を完成させ、同時に劇場で同作品に関するシンポジウムを開催した。制作者、観客双方の反応を取材した論考を、学術論文にまとめ発表した。 国立劇場で「ハンディキャップと演劇」シンポジウムを共同開催した(2017年12月)。この中で、世界とオーストリアリアにおけるディサビリティ演劇の概要と、同年にメルボルンで初演された『エレファントマンの現実と想像上の歴史』についての論考を発表した。また、オーストラリア演劇における環境のサスティナビリティを明らかにする論考、「演劇における環境のサスティナビリティ」を、論文集『サスティナビリティ・サイエンスとオーストラリア研究』(オセアニア出版社、2018年)にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究が現代の演劇を対象としている以上、実際の上演と同時進行しながら研究を進めていくことになる。幸いなことに、研究者が関わるいくつかの上演が日本で実現することにより、それにあわせてシンポジウムの開催や、制作者へのインタビュー、観客へのアンケート調査などの研究を行うことが出来た。これらはみな、当初の計画以上の進展をもたらした。特に重要な上演は次の通りである。『ノームとアーメッド』(せんがわ劇場)、『ジャック・チャールズvs王冠』(先住民劇団イルビジェリ+ふじのくに せかい演劇祭)、『女と男とシェイクスピア』(俳優座)。
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Strategy for Future Research Activity |
ふじのくに せかい演劇祭で上演された『ジャック・チャールズvs王冠』について、観客の反応と先住民劇団イルビジェリの取材結果をまとめ、分析する。成果は論文で発表する。 オーストラリア日系人の物語『ヤスキチ・ムラカミ』については、引き続き劇作家、オーストラリアの制作者側、日本の演劇人、研究者と意見交換をしながら、日本での上演の準備を進める。この準備段階から上演までを論考にまとめ、学術論文に発表する。 オーストラリアのディサビリティ文化を反映した演劇作品について、特に2018年に来日公演のあるBack to Back Theatreを中心に調査、観客の反応分析を行う。
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Causes of Carryover |
必要な物品の購入金額の都合で、次年度使用額が生じた。 差額は消耗品の購入に充てる。
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Research Products
(6 results)