2016 Fiscal Year Annual Research Report
Racism, Colonialism, and the Politics of Multiculturalism in Contemporary West Coast Canadian Literature
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26370341
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
戸田 由紀子 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (40367636)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カナダ西海岸文学 / マイノリティ文学 / イーデン・ロビンソン / ハイスラ作家 / ラリッサ・ライ / ポストコロニアル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「多文化主義」政策が現代カナダ西海岸文学に与えた影響を踏まえながら、現代カナダ西海岸の非白人(ビジブル・ マイノリティおよび先住民)文学における「人種主義」と「植民地主義」に抵抗する物語手法および言語行為を明らかにすることにあ る。 28年度は、カナダの現代先住民作家による作品がどのように支配者側の設定した枠組みに揺さぶりをかけ、不平等を維持するその権力構造に問題提起し、植民地化と経済の動きが人種主義と深く関わっているということを浮き彫りにしているかを検証した。具体的にはハイスラ作家のイーデン・ロビンソンの作品に着目し、500年におよぶユーロカナディアンによる植民地支配が忘れ去ろうとしてきた負の歴史がどのように描き出されているか、とりわけ「文化的ジェノサイド」と呼ばれる寄宿学校制度が奪っていた先住民の言葉と歴史と文化の記憶がどのように描かれているかを分析した。そしてこの物語が、「死者について語る物語」であることを指摘し、それが国家の正史が忘れようとしてきた負の過去がどうのように描き出しているかを考察した。 今年度の研究調査は8月にカナダのバンクーバーのUBCを中心に資料収集を行い、Festival of the Written Artsに出席し、現在活躍するカナダ作家との意見交換を行った。成果発表は、12月には名古屋大学で開催された日本比較文学会の中部支部大会のシンポジウム「戦争(争い)における記憶と忘却――和解に向けて」のパネリストとして参加し、イーデン・ロビンソンの『モンキー・ビーチ』の研究発表を行った。28年度に出版した業績には、共訳の『ケンブリッジ版 カナダ文学史』(第4部・18章)および3月に金星堂より出版された論文集『新たなるトニ・モリスンーその小説世界を拓く』の2点がある。
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Research Products
(4 results)