2017 Fiscal Year Annual Research Report
Oral Tradition and its Transmission of Southern and Eastern European Immigrants in Cities from 1880s to 1930s America
Project/Area Number |
26370345
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
ウェルズ 恵子 立命館大学, 文学部, 教授 (30206627)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大衆芸能 / ユダヤ人 / アイルランド人 / ミュージカル / 移民文化 / 歌 / 音楽文化 / 宗教 |
Outline of Annual Research Achievements |
南欧東欧の都市移民の口承伝承は極めて困難であった。経済的苦境に加え出自の明示はマイナスに作用する場合が多く、移民はアメリカに進んで順応しようとしたためであろう。また、二世以降はアメリカで教育を受け英語が母語になったので、口頭伝承はさらに困難になった。他方、南欧東欧に限らず多数のアイルランド人を含めた1880~1930年代の「新移民」の二世は、親の世代がアメリカでの経済的成功の邁進する傍らで、英語を十分に理解しない人々にも享受可能な文化を創出していく。その一つがミュージカルでありジャズであり、映画の流行へとつながる。
アメリカの大衆的芸能文化の特質は次のようにまとめられる。 1)芸能は本来宗教祝祭的なものであるが、アメリカでは出発段階から非宗教的で、代わりに、どう行動すれば無難に生きていけるかが表現されている。極めて現世的表層的とも言え、その反面でアメリカ文化を現代の世界で広く受け入れ可能なものにした。ディズニー映画の現世的で保守的な価値観はその代表であろう。ディズニーはアメリカ主流文化の産物ではあるが、新移民の第二世代が多数これを享受し影響を受けている。 2)音楽は器楽的な発達が著しい。音楽文化的感覚の方が歌詞の享受に必要な言語的感覚より世代交代が早いと思われる。 3)歌詞は宗教性が希薄、恋愛やアメリカ中心的な内容表現を共通基盤とする。英語は語彙も文法も簡単で単純なものが多く、複雑な内容や個人的な強い感情表現を含まない。比喩も間文化的に理解可能な単純さが目立ち感覚的なものが中心だ。宗教的行事に関する歌も、モチーフを非宗教的非民族的に書いてある。「クリスマスツリー」や「雪」を前面に出して、イエス・キリストに関する言及を含まないなど。 4)宗教性の希薄さ、保守的なモラルの称揚、メッセージの伝達に言語が果たす役割が少ないことなどの性質は戦後日本文化にも通じ、この共通性は研究に値する。
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