2015 Fiscal Year Research-status Report
想像の共同体から〈土地にまつわる紐帯〉へ―文学批評再読による1980年代文化論
Project/Area Number |
26370347
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
大貫 隆史 関西学院大学, 商学部, 准教授 (40404800)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 英米文学 / イギリス文化 / ウェールズ / ナショナリズム / 批評理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、1980年代英語圏ナショナリズム論を、「想像の共同体」「土地にまつわる紐帯」といったキーフレーズに焦点を据えて論じることで、1980年代英国文化論の見直しの端緒を開くことにある。課題遂行上の基軸として、1. Raymond Williamsの1980年代批評並びに小説におけるナショナリズム論の分析、2. 1980年代ウェールズ英語文学批評とWilliamsナショナリズム論における差異と連続性の析出、3. 社会科学におけるナショナリズム論の批判的分析、4. 1980年代文化論の系譜学的位置付けに要する前後の時期の分析の四つが設定されている。 本年度は、前年度に重点的に行った1.についての作業を踏まえ、2. および3. に関して、成果公表を視野に入れつつ考察を進めた。3. については、ベネディクト・アンダーソンを中心とする1980年代の社会科学的ナショナリズム論が、構築されきった変化ないしは成長の余地のないものとして「ネイション」を記述する一方で、トム・ネアンそしてレイモンド・ウィリアムズにおいては、「ネイション・ステイト」としての「ネイション」を擁護するナショナリズムへの批判という点でアンダーソンらと共通点が見られるものの、より広範な繋がり(例えばヨーロッパなど)とよりローカルな繋がり(スコットランドやウェールズ)の双方を、いわば同居させるものとしての(ラディカルな)「ネイション」については、必ずしも全否定されていない可能性が高いのではないか、という知見が得られた。2. については、3. と比して対象とする書き手と論点を限定してしまうことにはなったが、その「連続性」に関して、「ソーシャリズム」「ヨーロッパ主義」を鍵語にその概要をつかむことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初平成28年度以降に予定していた成果公表作業を本年度中に行うことができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
課題遂行上四基軸とした、1. Raymond Williamsの1980年代批評並びに小説におけるナショナリズム論の分析、2. 1980年代ウェールズ英語文学批評とWilliamsナショナリズム論における差異と連続性の析出、3. 社会科学におけるナショナリズム論の批判的分析、4. 1980年代文化論の系譜学的位置付けのなかで、平成28年度以降の成果公表を期していた2. および3. について、平成27年度中での公表を行ったが、3. については対象とする書き手ならびに論点を限定させたため、その補足的考察作業ならびに4. についての考察を中心的に進めるものとする。
|
Causes of Carryover |
資料読解に要する資料(ウェールズの地質学的特性についてのもの)の購入費として予定していたが、資料の詳細の特定に日時を要したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
資料読解に要する資料(ウェールズの地質学的特性についてのもの)の購入費として使用を予定している。
|
Research Products
(2 results)