2014 Fiscal Year Research-status Report
19世紀アメリカ文学にみる隠喩としてのトランスヒューマニズムに関する学際的研究
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26370348
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
中村 善雄 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (00361931)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オートマトン / 機械論 / ナサニエル・ホーソーン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究実施計画に基づき、まず19世紀中葉におけるアメリカへの機械文明の導入の意味と、それに対するアメリカン・ルネサンスの作家達の反応をレオ・マークスの古典的名著を初めとする関連資料から考察し、次に機械文明導入に伴って、アメリカにおいても流行したオートマトン(自動人形)誕生の意義やその歴史的変遷について研究した。それを踏まえて、アメリカン・ルネサンスの作家、特にナサニエル・ホーソーンと彼の短編「美の芸術家」におけるオートマトンの表象を、同時代の作家エドガー・アラン・ポーの短編「メルツェルの将棋差し」やハーマン・メルヴィルの「鐘楼」におけるオートマンと比較検討し、ホーソーンのオートマンは精神と肉体を二分するデカルト的な機械論を超越し、ダナ・ハラウェイが定義する、境界攪乱を誘発する現代的なサイボーグに繋がる独自のオートマトン像を提示していることを明らかにした。その研究成果を研究ノート「「美の芸術家」にみる機械論的世界―ホーソーンのオートマタ―」(『ホーソーン研究』No.2)と題して発表し、更にそれをアメリカの機械文明導入からの歴史的変遷の中でより包括的に捉えた論文「機械身体の考古学―ナサニエル・ホーソーンとテクノロジー」(『関大英文学―坂本武教授退職記念』)を発表した。また、上記2つの論考を執筆する上で、夏季休暇時にハーバード大学のホートン図書館、ワイドナー図書館を中心に一次資料の収集に努めた。(申請時に提出した研究計画では、ヨーロッパ発祥のオートマトンの実地的検証を目的とし、パリへの出張を予定していたが、計画した出張日数が確保できず、次年度に予定していたボストンに出張先を変更した。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年においては、19世紀アメリカ文学におけるオートマトンを主題とした小説の比較研究を主眼として、オートマトン、フランケンシュタイン、テクノロジカル・サブライム、ピグマリオン神話、シュミラークル、時計、蒸気機関といった語をキーワードを利用して、デカルトの「動物機械説」やラ・メトリの「人間機械論」といった古典的な機械論、あるいはオートマトンの歴史的変遷を踏まえた上で、アメリカン・ルネサンスの作家のオートマトンの表象の相違に着目した。この研究目的の結果を、次の2つの論考、研究ノート「「美の芸術家」にみる機械論的世界―ホーソーンのオートマタ―」(『ホーソーン研究』No.2)と、この「研究ノート」を更にアメリカの機械文明導入からの歴史的文脈のなかで捉え直した論文「機械身体の考古学―ナサニエル・ホーソーンとテクノロジー」(『関大英文学―坂本武教授退職記念』)という研究成果で出すことが出来、当初予定した研究計画は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度においては、当初の研究実施計画に基づき、バイオテクノロジー的改変によるポスト・ヒューマン的視座から19世紀アメリカ文学を読み解くことを主眼としている。具体的にはナサニエル・ホーソーンの短編作品分析を念頭に置き、マッドサイエンティストによって構築された「怪物」に着目し、人工的改造によって惹起される男性/女性、自然/人工などの境界喪失の問題を、ダナ・ハラウェイを初めとするサイボーグ理論を用いながら論じ、19世紀の文学作品を一種のサイエンス・フィクションとして位置づける試みを行う。また27年度にその研究成果の一端を関連学会にて紹介し、機関誌に発表する予定となっている。
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Causes of Carryover |
今年度の計画からすれば、主に夏季休暇中に行う海外での研究調査分の旅費が多くなる予定であったが、本務校の業務や国内学会への出席が必要となり、当初予定した海外調査の日数を短縮したことで、予定していた旅費の支出が少なくなった。また、設備備品費としてスキャナー購入代を計上していたが、大学の個人研究費で購入することが出来た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度における海外調査の期間短縮に伴って調査できなかった、あるいは資料収集できなかった部分を補うために、次年度の夏季休暇における海外調査にて、時間をかけてより充実したものにするために今年度の余剰額を使用する予定である。また、次年度には設備備品費を特に計上していなかったが、研究遂行のために老朽化したデジタル機器購入を計画している。
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Research Products
(7 results)