2016 Fiscal Year Research-status Report
19世紀アメリカ文学にみる隠喩としてのトランスヒューマニズムに関する学際的研究
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26370348
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
中村 善雄 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (00361931)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サイエンス・フィクション / ポストヒューマン / オートマトン / タイプライター / 電信 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に行われたエコクリティシズム研究学会年次大会シンポジウム「ホーソーンと自然」での研究成果を基にした招待論文「ホーソーンはサイエンス・フィクションの夢をみるか」を『エコクリティシズム・レビュー』No.9(エコクリティシズム研究学会)にて発表した。さらにホーソーンの短編とポスト・ヒューマンとの関係を進展させた研究成果を「ホーソーンの短編におけるポスト・ヒューマン的想像力」と題して、日本ナサニエル・ホーソーン協会関西支部例会(於:関西学院大学大阪梅田キャンパス、2016年11月12日)にて発表し、ホーソーン研究者と意見交換を行なった。ジェイムズに関しては、機械であるタイプライターの打鍵音がジェイムズの意識に及ぼす影響と執筆スタイルの変化を考察した研究発表を「機械が奏でる音と書くことへの侵入性―Henry Jamesの口述筆記」と題して、異文化間情報ネクサス年次大会(於:東京電機大学、2017年12月17日)に行った。その他、ホーソーンの没後150年記念論集である『ホーソーンの文学的遺産―ロマンスと歴史の変貌』(開文社、2016年5月)に「ホーソーンの鉄道表象―「天国行き鉄道」を巡るピューリタン的/アフロ・アメリカン的想像力」と題した論考を、『ホロコーストとユーモア精神』(彩流社、2016年8月)に「ユダヤ的ユーモアと転倒するアイデンティティ」という題目の論文を掲載した。また、『ヘンリー・ジェイムズ、いま―没後百年記念論集』(英宝社、2016年9月)の編著者として、ジェイムズ研究の流れを概略した「まえがき」並びに「ジェイムズの眼差しの戦略と差延化する/されるアイデンティティ」という論考を執筆した。こうした研究成果の公開に加えて、8月の夏季休暇期間を利用して、ハーバード大学のワイドナーを初めとする図書館にて、対象作家と当該研究課題に関する一次資料の収集を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は19世紀のメディア文化(電信やタイプライター)によって実際に引き起こされる可能性のある、内/外や時間/空間感覚の喪失や意識の拡張に伴う問題を中心的な研究課題としたが、この研究に対する研究発表を行い、また前年度の課題であったバイオテクノロジー的改変によるポスト・ヒューマンを主題とする小説研究に関連する論文並びに関連する論考が学術雑誌や共著本にて複数公開され、当初の計画以上の研究成果を出せたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は3年の研究期間を予定しており、28年度末の終了予定であったが、より精緻な研究の実行を目的として、研究期間を1年延長した。その期間内に、対象作家のテクノロジーに対する受容形態の相違やテクノロジーが作家に及ぼす影響の比較考察や(メディア)テクノロジーの発展に伴う人間とテクノロジーの関係の変容について研究を進めていく予定である。またジェイムズやホーソーンの作品をサイエンス・フィクション(以下SF)の視点から再考察し、SFジャンルへの位置づけを試みたいと考えている。加えてこの延長期間内に、エコクリティシズム研究学会より当該研究に関する論考を所収した共著本が出版される予定となっている。
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Causes of Carryover |
平成27年度に予定していた夏季休暇中のアメリカでの調査研究が、複数の原稿執筆やシンポジウムでの発表、あるいは他の科研プロジェクト研究会への参加のために実行できなかったために、アメリカにて得られると想定された資料に基づく研究が28年度にずれ込んでしまい、以後の研究計画の一部を29年度に行う必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該研究は28年度末をもって終了する予定であったが、研究のより精緻な実行を目的として研究期間を1年延長することが承認され、当該助成金の残りも次年度に繰り越すことで、その研究の完遂に充てる。残高は比較的少額であるので、主に図書購入や国内の学会出張に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)