2015 Fiscal Year Research-status Report
ポスト冷戦期アメリカ文学におけるディザスターとサバイバル
Project/Area Number |
26370350
|
Research Institution | Nishikyushu University |
Principal Investigator |
渡邉 真理子 西九州大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (70389394)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ディザスター / サバイバル / 戦争 / ポストモダン小説 / アメリカ / 冷戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は主にアメリカ文学サバイバル研究会を口頭発表の場として、助成金により合計7回の例会を開催することができた。本研究課題であるディザスターには災害・戦争・テロリズムが含まれるが、当該年度はそのうち「戦争」に焦点をあわせた資料の読解を行った。一連の口頭発表はすべて現代アメリカ作家Tim O'Brienに関するもので、取り上げた作品は、_If I Die in a Combat Zone_、_Northern Lights_、_The Nuclear Age_、_In the Lake of the Woods_、_Tomcat in Love_、_July, July_の6冊である。一般にヴェトナム戦争の影響において論じられるこの作家の冷戦期からポスト冷戦期へと至る変遷を辿りながら、ポスト・ヴェトナム世代が生きる冷戦期アメリカにおけるサバイバルの諸相を段階的に把握できたことは収穫であった。 また、本課題との繋がりは間接的なものではあるが『スクリブナー思想史大事典』翻訳にあたって、担当した5つの項目「フォルマリズム」「モダニズム」「新批評」「ディストピア」「サイエンス・フィクション」に関する文学批評の読み直しを行った。現代アメリカ文学の全体像の捉えなおしという意味で、これは有益な作業となった。 その他、昨年成果を発表した<ロードナラティヴとサバイバル>論に関しては、Cormac McCarthyの_The Border Trilogy_をさらに読み進めることで更新の目安を立てることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
次年度に当該課題名を銘打ったワークショップ開催を計画しており課題テーマの全体像を先に捉える必要が生じたため、当該年度は資料の読解に集中した。結果、論文執筆はひとまず保留せざるをえなかったが、準備期間としては実に有益な年度となった。次年度はこの成果を反映させた出版に向けて努力したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年12月に「ポスト冷戦期アメリカにおけるディザスターとサバイバル」というテーマで、この分野の専門家たちを招聘した学術ワークショップを開催予定である。開催にあたっては九州アメリカ文学会の協力を得る予定であり、多くの参加者が見込まれる。 また、その成果発表の活字化と合わせて、27年度にすでに準備済みのTim O'Brienのサバイバルに関する論考をまとまった形で活字化して出版する計画である。その作業の過程は随時アメリカ文学サバイバル研究会にて報告するため、引き続き研究会開催を行っていく。 さらにポスト冷戦期アメリカにおけるロードナラティヴとサバイバルに関しても、更新した論考を成果として発表したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
平成27年度はスケジュール上の事情から海外出張(資料収集と実地調査)を行うことができず、また、課題遂行の遅れから英語論文の執筆が間に合わなかったことから、校正費用として計画していた額を使用する機会を得られなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額の用途としては、海外出張旅費、人件費、謝金等が想定される。平成28年度は海外出張旅費・英語論文校正費用に加え、ワークショップやシンポジウム等の学術企画開催にあたっての人件費・謝金が発生する見込みである。
|
Research Products
(8 results)