2015 Fiscal Year Research-status Report
ステファヌ・マラルメの「書物」と19世紀末フランス・ベルギーにおける出版界
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26370357
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中畑 寛之 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (70362754)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マラルメ / 出版 / 書誌 / フランス / 19世紀末 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究会での発表1回と報告1回、および学会での発表1回を行った。文献調査を行い、マラルメが刊行した書物の実物を手に取り、その刊行過程や同時期の出版界の様子などに考えを巡らせているが、充分な時間が取れず、論文としてまとめるには至っていない。発表によって考えに方向付けを与え、質疑応答を繰り返すなかで、研究におけるいくつかの種を育てている状態と言えよう。今後は論文執筆に全力を尽くしたい。 本年度はまず、2015年9月23日に京都大学で開催された第21回関西マラルメ研究会で「ステファヌ・マラルメと彼の出版人たち」と題した発表を行った。詩人が生前に実際に刊行(再刊)した約20冊の本に関して、それに係わった出版人たちと出版様態、本作りの現実とマラルメの理念との関係などについて考えを述べ、参加者からは有益な質問や意見をいただくことができた。 10月31日には、やはり京都大学で開催された日本フランス語フランス文学会秋季大会の場で、「ステファヌ・マラルメにおける出版=発表の理論と実践」について研究発表をさせていただいた。「出版=発表」(publication)の概念は publier(公にする)や public(公衆・読者)といった意味も含む、鍵概念として発展させたいと考えている。19世紀末、小説が、さらには新聞が数万部、数十万部売られる状況のなかで、マラルメは己れの発表=出版行為を社会的にどう位置づけていたのだろうか? 「習作」と考える本(あるいは作品)を公にし続けること、この行為によって彼はなにを果たそうとしていたのか? 以上のような問題意識のもと、考察を展開した。 さらに2016年3月18日には第22回関西マラルメ研究会でも「散逸、あるいは新たに散らばった星座 ― ステファヌ・マラルメ関連資料の売立てを巡って」という報告をする機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
資料調査および資料収集に関してはおおむね順調に進んでおり、マラルメの出版した本の書誌の作製もほぼ完成しつつある。ただ、大学での雑務に半ば忙殺されかたちで、それら資料を整理・分析し、論文としてまとめる時間が充分に取れなかった。そのため、発表という形で、自分の考えに道筋をつけ、論文へと昇華する準備をしている段階に止まっている。成果が充分でないという理由で、現在までの進捗状況を「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は最終年度にあたるため、書誌の完備をめざして、さらなる資料調査と情報収集を行いこととする。また、これまでの準備や発表等によって得た知見をもとに幾つか論文を執筆する予定である。 今年度は充分な時間が確保できるはずなので、秋にはパリに滞在し、研究の成果をまとめるつもりである。その後、細かな確認・修正等を行い、マラルメの刊行した本の書誌を年度末までに「関西マラルメ研究会アルシーヴ Mall'archives」(http://www.geocities.jp/mal_archives/)上にアップしたい。
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Causes of Carryover |
2015年度は学内業務に多忙であっただけでなく、フランスでにテロなど、例年のように休み中に海外渡航をし、資料調査等をじっくりすることができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度秋にやや長期の滞在をすることで、解消したいと考えている。
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Research Products
(4 results)