2016 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on the Classical Literary Works on the basis of 'allusive appropriation'
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26370360
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
大芝 芳弘 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (70185247)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 登 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (10507809)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 西洋古典学 / 引喩適合 / 伝統と革新 / ジャンル / 文体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究が課題に掲げる「引喩適合」とは、引喩(allusion)という修辞学的手法に基づいて先行作品に含まれる要素を様々な仕方で暗示することで自らの作品に適合させる形で取り込む(appropriate, adapt)という方法を指す。allusionとは、修辞学上の「引喩」の他にも「暗示、示唆、仄めかし」とも訳される通り、実際の作品におけるその運用の実態は極めて多様である。本研究で着目する「引喩適合」の観点は、必ずしも作者の意図を前提にしない場合をも含め、ある作品が先行作品を何らかの形で踏まえるか影響・作用を受けていると見なしうる限りにおいて、当該テクストが先行テクストへの何らかのallusionを含むものと捉え、しかし同時に当該作品自体の個別性つまり式的・文体的要素(措辞・語法、規模と構成など)と内容的・題材的要素(主題やモティフ、トポス、調子や語り口など)、要するに当該作品をその作品たらしめている独自性、特に作品全体としての構想や統一性に、そうしたallusionがいかに適合されて寄与しているかを究明しようとするものである。 3年間の研究の最終年度に当たる今年度は、「引喩適合法」の実例として検討すべき課題として、小池は前年度から継続のプルータルコスの作品に加えてアイスキュロスの『ペルサイ』を改めて取り上げ、大芝も引き続きルクレーティウスの哲学詩を対象としつつ、これと密接に関係するホラーティウスの作品全般の再検討とともに、特に『カルミナ』における先行作品の受容と独自性を考察する作業を進めた。その成果の一部として、小池は『ペルサイ』の一つの難読箇所に関する綿密な検討とテクストおよび解釈についての解決案を提示する研究発表を行い、また大芝もホラーティウス『カルミナ』2.16への先行作品からの影響と作品の独自性を論ずる発表を行い、いずれも論文の形で公表する予定である。
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