2014 Fiscal Year Research-status Report
西洋古典文学における死生観表現の源流と展開に関する文献学的・比較作品論的研究
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26370367
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
佐野 好則 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (50295458)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 西洋古典学 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の第一年次にあたる本年度は、本研究のうち西洋古典文学における死生観表現のホメーロス叙事詩における源流に関する研究分野について先行研究を調査分析し、特に日本の研究機関には所蔵されていない文献を含めた貴重な資料について集中的に調査・分析・複写を行うために科研費によりロンドン大学Classics Libraryへの研究旅行を実施した(6月30日より7月8日まで)。また7月16日には研究協力者Stephen Harrison教授に研究会議に出席していただき、ラテン文学との比較文学的観点から本研究の方向性について専門的アドバイスを受けた。その他研究代表者が所属する研究機関の旅費予算により、京都大学文学研究科図書館への研究旅行を実施して(7月22日より7月24日まで)関係資料の調査・分析・複写を行った。これらの研究の中間的成果として9月1日に関西セミナーハウスにて開催された国際シンポジウムにて研究代表者が英語による講演を行い、また10月18日に成城大学にて開催された古典文献学研究会において研究代表者が日本語による講演を行った。本研究のうち、死生観表現の展開に関する研究分野については、ソポクレース『アンティゴネー』の第1スタシモンに関する解釈の英語の論文を執筆し、Japan Studies in Classical Antiquity誌に掲載した。さらにホメーロス叙事詩以来の死生観表現の展開に関して、ギリシア悲劇および歴史記述に関する基礎的な調査に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホメーロス叙事詩における死生観表現に関する研究分野においては、ロンドン大学への研究旅行により、日本では入手することのできない貴重な文献も含めて豊富な文献資料を縦横に用いて集中的に研究を進め、『イーリアス』の戦闘場面における死生観表現に関する従来の研究状況を把握し『イーリアス』の戦闘場面のギリシア語原典について文献学的検討を加えることができた。また研究協力者Stephen Harrison教授による専門的アドバイスにより、ラテン文学との比較文学的な方向性を本研究に取り入れることができた。京都大学への研究旅行においては、ロンドン大学図書館にも所蔵されていなかった本研究にとって重要な資料となるドイツの学位論文を閲覧することができた。ホメーロス叙事詩における死生観表現に関する中間的研究成果として9月に関西セミナーハウスでの国際シンポジウムにて英語で講演し、10月に成蹊大学での研究会において日本語で研究発表をした。また死生観表現の展開に関する研究分野では、その中間的な研究成果としてソポクレース『アンティゴネー』に関する英文の論文を専門誌に掲載した。さらに次年度に向けて新たな課題を設定することができた。以上の理由から、本研究の第一年次は概ね順調に進展しているとみなすことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第2年次に向けては、死生観表現のホメーロス叙事詩における源流に関する研究分野については、さらに文献学的基礎的検討として口承叙事詩論、新分析論、ナラトロジー研究などの諸研究理論を把握する作業を進める。その中間的成果として論文を出版することを目指す。また『イーリアス』における主要な英雄たちが語る物語にあらわれる死生観表現を、叙事詩全体の構成との関連の観点から検討を進め、これについても中間的成果として論文を出版することを目指す。他方死生観表現の展開に関する研究分野においては、ギリシア悲劇と歴史記述における死生観表現の検討を推進し、その中間的成果として秋に開催が予定されている国際シンポジウムで英語による研究発表を行うことを目指す。両研究分野とも、国内で入手が困難な必須参考文献の調査・分析のために、夏期に英国オックスフォード大学図書館への研究旅行を実施する予定である。
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