2015 Fiscal Year Research-status Report
西洋古典文学における死生観表現の源流と展開に関する文献学的・比較作品論的研究
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26370367
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
佐野 好則 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (50295458)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 西洋古典文学 / 比較文学 / 『イーリアス』 / 『オデュッセイア』 / ヘロドトス / 文献学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、本研究のうち、ホメーロス叙事詩の文献学的検討の分野では、近年の研究の発展について調査し、その成果の一部は書評「M. L. West, The Making of the Odyssey」として『西洋古典学研究』誌に掲載された。8月にはオックスフォード大学に研究旅行を実施し、ホメーロス叙事詩およびヘロドトス『歴史』における死生観表現に関する文献調査を実施し、またオックスフォード大学所属の研究協力者であるMalcolm Davies教授、Stephen Harrison教授、Patrick Finglass教授と研究会議を開催した。9月にはPatrick Finglass教授を国際基督教大学に招き研究会議を開催した。また12月16日には国際基督教大学にて開催された国際シンポジウム""History and Historicity""にて、ヘロドトス『歴史』のうち、第1巻のクロイソスとソローンの会見場面における死生観表現に関する口頭発表を英語で行った。この口頭発表の内容は、来年度出版予定の歴史と歴史性に関する論文集に掲載するべく英語の原稿作成作業を進めた。3月にはデルポイの碑文にあるアポロン讃歌に関する口頭発表を行った。また昨年度英語および日本語で行った『オデュッセイア』第22歌における死生観表現に関する口頭発表については、日本語の論文を『フィロロギカ』誌に発表し、来年度出版予定の古代ギリシアにおける死の表象に関する論文集に掲載するべく英語の原稿作成作業を進めた。また来年度出版予定の『イーリアス』に関する論文集に掲載するべく、ホメーロス叙事詩の研究史に関する論文と、『イーリアス』におけるパラデイグマ(範例)に関する論文の原稿作成を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の文献学的基礎作業の分野については、近年の研究史を調査し、その成果の一部を書評として出版し、また『イーリアス』の研究史についての論文の原稿の準備を進めることができた。またホメーロス叙事詩における死生観表現の分野については、昨年度行った口頭発表について、まず日本語の論文を出版し、また英語の論文の原稿作成を進めることができた。そして、『イーリアス』のパラデイグマ(範例)における死生観表現に関わる論文の作成準備を進めることができた。また死生観表現の展開の分野については、海外の研究協力者との数回にわたる研究会議を通じて得たアドバイスにより、ヘロドトスの『歴史』における死生観表現が新たな研究課題として設定され、この課題について国際シンポジウムで英語による研究発表を実施し、英語での論文発表に向けて作業を進めることができた。また関連する研究課題としてデルポイのアポロン讃歌碑文に関する口頭発表をすることができた。以上のように、本研究を構成する3つの分野のいずれにおいても、中間的な成果発表をすることができ、さらに最終的な成果発表に向けての準備を進めることができた。そのため平成27年度中、本研究は概ね順調に進展したと判断することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第3年次であり最終年度となる平成28年度においては、本研究の文献学的基礎的研究分野については、『イーリアス』の研究史に関する論文を完成させ、『イーリアス』に関する論文集に掲載することを目指す。ホメーロス叙事詩における死生観表現に関する分野については、『オデュッセイア』第22巻の求婚者殺戮場面に関する英語論文を完成させ、海外の出版社より出版予定の古代ギリシアにおける死の表象に関する論文集に掲載することを目指す。またこの分野については、『イーリアス』におけるパラデイグマ(範例)に関する論文を完成させ、『イーリアス』に関する論文集に掲載することを目指す。さらにホメーロス叙事詩における登場人物による物語に現れる死生観表現に関する単著の出版に向けての作業を進める。また死生観表現の展開に関する比較文学的分野については、ヘロドトス『歴史』における死生観表現に関する英語論文を完成させ、海外の出版社より出版される予定の歴史性に関する論文集に掲載することを目指す。またギリシア抒情詩およびギリシア悲劇における死生観表現に関する調査を進める。これらの作業に必要な文献のうち、購入可能なものについては科研費を用いて購入する。8月に科研費を用いてオックスフォード大学およびフィレンツェ大学への研究旅行を実施し、必要な文献を収集し、オックスフォード大学では、研究協力者であるMalcolm Davies教授、Stephen Harrison教授、Patrick Finglass教授との研究会議を開催し、本年度の作業に関する専門的アドバイスを得る。
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