2015 Fiscal Year Research-status Report
子供から眺めた第二次大戦期フランスのユダヤ人迫害の検討
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26370369
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
安原 伸一朗 日本大学, 商学部, 准教授 (80447325)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ショアー / 証言作品 / 現代フランス文学 / インファンス |
Outline of Annual Research Achievements |
子供たちも標的となった「ヴェルディヴ事件」を集中的に取り上げた昨年度から引き続いて、今年度は、とくに、迫害を受けた子供たちの「言葉」に焦点を当てて研究を進めた。 まず、物心つく時期に反ユダヤ主義の波に呑まれた子供たちが、しばしば自分たちの出自を偽って生き延びたことに注目し、彼ら彼女らが、生まれ育った言葉を捨て去り、外国語を習得せざるをえなかった経緯、そしてそれが子供たちのアイデンティティを大きく揺るがした事態を分析した。次いで、そのような言語の獲得が、大人の世界に入るためというだけでなく、何よりも生存のため、そして自らの経験を証言するために行われた点を明らかにした。 当時の大人たちが、迫害以前の世界、すなわち、取り戻すべき戦前の生活を思いながら迫害期を過ごそうとしたのに対して、子供たちは、迫害以外の世界を知らぬまま言語を習得し、回復すべき平穏な幼年期をもっていないという点に着目し、言葉をもたぬ存在としてのインファンスという概念を援用しつつ、彼ら彼女らの証言作品を形作る言葉そのものが、大人たちにとっては未聞のものとして存在し、当初から永遠に死の恐怖に裏打ちされたものとして立ち現れることを明らかにした。 この成果は、2015年度に公開研究会「フランス現代文学における第二次大戦の記憶」にて「ショアーと文学――子供たちの言葉」として口頭発表した。また、その際の質疑応答を踏まえて、「ショアーと子供の言葉」と題した論文として2016年度中に発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主たる目的たる迫害下の子供の観点から、とくに子供たちの「言葉」、そして彼ら彼女らの証言作品の性質について、2015年に刊行された最新の研究資料なども参照しながら、口頭発表およびその際の質疑応答を通じて、おおまかな見取り図を描くことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、それぞれの子供たちの証言作品に共通して見られる特徴を拾っておおよその見取り図を描き、それらの作品を形作る言葉の性質について原理的な考察を行ってきたが、今後は、個別的観点から、各証人たちの相違やその意味を解明していく。また、「ヴェルディヴ事件」でも重要な役割を果たしたフランス国内の収容所についても、CERCILやMemorial de la Shoahの所蔵資料を参照していく。 他方で、レーベンスボルン計画をめぐる証言作品の分析も進める予定である。
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Causes of Carryover |
2015年度中にフランスのCERCILやMemorial de la Shoahを訪れる予定だったが、2015年秋の同時テロ事件の発生により、翌年度に延期することにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度には上記のフランスでの調査を行いたい。
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Research Products
(1 results)