2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370373
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
真野 倫平 南山大学, 外国語学部, 教授 (30257232)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 仏文学 / 演劇 / 科学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、20世紀初頭にフランスで誕生した恐怖演劇であるグラン=ギニョル劇に対する諸科学の影響を解明することで、科学と文化の相互的影響を明らかにすることを目的にしている。申請者は数年前にこのジャンルの研究を開始し、同時代の医学・精神医学・犯罪学などの諸科学との関係を検証してきた。同時に、周辺領域である文学・映画・絵画・舞台芸術といった表象芸術との比較研究を行ってきた。その意味で本研究は、ベル・エポックという一つの時代における文化・科学・政治・社会などの複数の領域を横断する学際的研究であるといえる。 2015年度の活動としては、まず、グラン=ギニョル劇の関連資料ならびに同時代の科学に関連する資料を国内外の書店から購入した。また、8月~9月にフランスへ国外出張を行い、フランソワ・ミッテラン国立図書館などで図書・新聞・雑誌に関する資料調査を行った。さらに、現代美術館、サーカス博物館、カルチエ財団美術館、ケ・ブランリー博物館、モンマルトル博物館などで資料調査を行った。さらに現地の文学研究者と協議を行った。 最後に、研究成果の一部をまとめて、2016年3月刊行の『南山大学ヨーロッパ研究センター報』第22号に論文「グラン=ギニョル劇における痙攣的身体」を発表した。本論文では、19世紀以降の精神医学における異常者像の変遷をたどりつつ、グラン=ギニョル劇において神経症的症状をもつ痙攣的身体が重要な役割を果たしていることを指摘し、それが同時代のブルジョワ社会の強迫観念のひとつであることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画のうち、まず資料収集については、グラン=ギニョル劇ならびに同時代の諸科学に関する資料として国内外の書店より書籍ならびにプログラムや書簡などの古文書を購入することができた。つぎに研究出張として、フランスに国外出張を行い、国立図書館や各種博物館において十分な資料収集を行うとともに、フランスの文学研究者に会って情報収集を行った。最後に研究の面では、今年度は前年度に引き続き、グラン=ギニョル劇と同時代の医学・精神医学との関係に関する研究をさらに進めることができた。研究成果としては、前年度に発表した論文「グラン=ギニョル劇における怪物的身体」の主題をさらに発展させ、論文「グラン=ギニョル劇における痙攣的身体」を刊行した。以上の点から、研究はおおむね順調に進展しており、当該年度の研究目的はほぼ達成できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度の研究計画としては、前年度に引き続きグラン=ギニョル劇と医学ならびに精神医学の関係について研究を続けたい。とりわけ以下の二つの方向性において研究を発展させたい。第一に、シャルコー、ビネ、ジャネといった当時の医学者や心理学者の著作を研究することで、当時の精神医学における狂気と異常性の問題を明らかにしたい。第二に、当時の精神病院の状況を、研究書や、同時代の文学作品や、当時の新聞・雑誌やルポルタージュなどのジャーナリズム資料を用いて明らかにしたい。そこでは精神病者の人権や監禁といった社会防衛にまつわる問題が浮かび上がるはずである。以上の作業を通じて、グラン=ギニョル劇が同時代の諸科学や社会状況と密接な関係にあることを明らかにし、ベル・エポックの時代における文学と社会を包括する知のありかたについて研究したい。
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