2017 Fiscal Year Research-status Report
ケベック・ベルギー・スイスの仏語圏文学にみる脱周縁性とトランスナショナルな変容
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26370376
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
真田 桂子 阪南大学, 流通学部, 教授 (60278752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩本 和子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (60203410)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ケベック / ベルギー / フランス語圏文学 / トランスナショナル / 脱周縁性 / ジャック・ブロー / 言語横断性 / 多層的ナショナリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度(2017年)の主要な研究成果としては、研究代表者である真田は、2017年9月に京都で開催された世界フランス語教授連盟(FIPF)アジア太平洋部会(CAP)と日本フランス語教育学会(SJDF)共同開催による国際学会において "Transformations d'esthetiques: echanges interculturels entre oeuvres litteraires japonaises et francophones" と題された研究発表を行った。その中で、20世紀初頭の日本にフランス近代詩を初めて本格的に翻訳し、日本語に大きな変容をもたらした堀口大學の訳業と、20世紀ケベックを代表する詩人の一人であるジャック・ブロー(Jacques Brault)の作品が日本の芭蕉や西行などの詩歌に大きな影響を受け、そのフランス語表現文学の芸術性に大きな変容がもたらされたことを検証した。この研究発表では、ケベックを始めとするフランス語圏の文学と日本の文学が互いに影響をもたらし合い、そのトランスナショナルな変容を通して新たな文学的価値と創造性が生み出されたことを明らかにした。 なお研究分担者の岩本は、2017年9月の同国際学会にて、シンポジウムにおける招待講演として"Qu'est-ce que la litterature belge ?" と題された研究発表を行い、ベルギーの仏語圏文学における脱周縁的でトランスナショナルな動向をしめす作家や文学概念に注目し、実際のテクスト分析や作家研究を通して、国家/地域/都市レベル、仏・蘭・独の言語横断性、ラテン/ゲルマンを横断する精神性など、ベルギーの<多層的ナショナリズム>の諸相が顕著となっていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、ケベックとベルギーを中心とするフランス語圏文学においてトランスナショナルな変容と脱周縁性がどのように進展しているかに注目し、研究代表者である真田はケベックを中心にその動向を分析し、研究分担者の岩本はベルギーを中心にその動向の分析を行った。昨年度は、京都で " L'ecologie du francais et la diversite des langues" をテーマとする大規模な国際学会が開催され、両者ともに研究発表を行い、当該研究課題について海外の研究者とも活発な意見交換を行い考察を深めることが可能となった。その機会に今後の研究の新たな展開に寄与する大きな示唆を得て研究が進捗した。 一方で、研究代表者の真田が予定していた海外出張が家庭の事情により延期せざるを得なくなり、最新の動向を収集し研究成果をまとめ上げる作業ができなくなった。そのため2018年度に海外出張を延期して行い包括的な研究成果の検証を行うこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の真田は、昨年度延期していた海外出張を2018年度に遂行する。モントリオール大学ケベック学研究所を中心に、最新の資料収集と現地の当該研究者、作家との研究打ち合わせや意見交換を行う予定である。また、研究代表者と分担者とが昨年度までのそれぞれの研究成果をもとに当該研究課題について包括的な共同討議と検証を行い、総合的な研究成果としてまとめ上げ、学会発表ならびに論文等にて発表する予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者の真田が昨年度の研究計画において予定していた海外出張が、家族の健康問題に係る事情により延期せざるを得なくなり、研究期間の延長を申し出て承認された。それにより2018年度に、繰り越した助成金により海外出張による資料収集と現地研究者との研究打ち合わせを行い、それを踏まえてこれまでの研究成果を総合的に検証しまとめる予定である。
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Research Products
(4 results)