2017 Fiscal Year Annual Research Report
The Functions of the Paratext in Duerrenmatt's Works
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26370388
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
増本 浩子 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (10199713)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 現代スイス文学 / デュレンマット / パラテクスト / 文学とメディア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ドイツ語圏スイスの20世紀文学を代表する作家フリードリヒ・デュレンマットの作品を、パラテクストをも含み込んだ「複合体」としてとらえ直し、デュレンマット作品におけるテクストとパラテクストの関係、パラテクストのもつ機能、パラテクストによって広がる表現の可能性について明らかにすることである。29年度の課題は、3年間にわたる具体的なテクストとパラテクストの分析を踏まえた上で、パラテクストの存在が作家に提供する表現の可能性・読者に提供する解釈の可能性とは何かについて考察することだった。研究の成果は次の通りである。 1)文学テクストに絵画等のパラテクストを配することにより、作家にとっては演劇や映画といった、映像を伴うメディアにより近い表現が可能となる。1950年代から60年代にかけて劇作家として活躍したデュレンマットはもともとは画家を目指しており、視覚的な表現は文学テクストの創作においても非常に重要な意味を持っていた。 2)いったん発表した戯曲や小説に対する観客や読者、文芸評論家、文学研究者等の反応を考慮に入れて、作者自らが書き加えた解説やコメント等とともにもともとの文学テクストを出版し直すことによって、作者と受容者とのインタラクションが可能になる。 3)上演を繰り返しながら書き直されていった戯曲の場合、最終的に文学テクストのみならず、上演記録、作者による注釈や解説等のパラテクストが含み込まれた「複合体」として出版されることによって、テクストの生成過程が読者にも理解できるものとなる。特にデュレンマットの場合、パラテクストの存在が初期の作品と晩年の作品との関連を明らかにしている。
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Research Products
(4 results)