2017 Fiscal Year Annual Research Report
Continuity and Transformation of Postwar Consciousness in Contemporary German Culture
Project/Area Number |
26370395
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
初見 基 日本大学, 文理学部, 教授 (90198771)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 戦後意識 / 戦後ドイツ / 集団の罪 / 戦後責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は,1945年の第二次世界大戦ドイツ敗戦以後,多くの人びとによってなんらかのかたちで抱かれてきた「戦後意識」の変遷を通時的に検討することを主目的としていた。とりわけ,「戦後責任」「罪」というような語で表される,ナチ時代の過去に対してどのような姿勢をとるかについて,言説史,思想史的な側面から分析をした。 その主導的役割は,敗戦前後から東西ドイツ建国の1949年までのあいだは占領国側が演じた。当初アメリカ合州国ではドイツに対する厳罰主義が「モーゲンソー計画」などで主張され,それは強制収容所の実態などが明らかになるにつれて強まった。ただしアメリカ側では起こりつつあった冷戦状況に鑑み,「マーシャル計画」に象徴される西側の復興,そして同盟化を明確にしたため,厳罰主義は間もなく撤回されている。ただ,その過程で「集団の罪(Kollektivschuld)」をめぐる議論が起きていた。その際,海外亡命者やスイスからのドイツ批判は「集団の罪」テーゼにもとづくものが多かったのに対して,ドイツ国内からの議論では,このテーゼを否定するものが主となる。本来近代法理論的には「集団の罪」はありえず,カール・ヤスパースの『罪の問題』などに代表されるように,「集団の罪」テーゼは間もなく退けられてゆく。 ただ本研究では,1945年の敗戦から数年間のあいだに交わされた「集団の罪」をめぐる諸議論が,論理的整合性とは別な次元で「戦後責任」問題をドイツにおいて潜在化させ,1960年代以降「過去の克服(Vergangenheitsbewaeltigung)」の議論として現れ,さらに1980年代半ば,顕著には2000年代には「想起文化(Erinnerungskultur)」を招来する,その前提をなすものであるとの仮設を立て,研究期間内にあっては,このテーゼがいかに衝迫力をもってドイツで迎えられたかを分析した。
|
Research Products
(3 results)