2014 Fiscal Year Research-status Report
宗主国の交代と植民地―20世紀スペイン語圏カリブ地域文学における共同体意識の研究
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26370396
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
久野 量一 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (70409340)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | キューバ / 植民地 / 知識人 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度には、①研究課題の関連資料の収集と整理(とくにキューバ)、②20世紀半ばのキューバにおける宗主国の交代をめぐる研究、③現地調査を進めた。 当初は予定どおり、20世紀半ばにおけるアメリカ合衆国→ソビエト連邦への宗主国交代にともなう知識人の戦略について、資料分析を進めていた。そのなかで着目すべき点として浮かび上がったのは、キューバ知識人のあいだでアメリカ合衆国とソビエト連邦の代理戦争とも言うべき戦争が戦われているということだった。この代理戦争は、知識人に政治的立場の表明を迫る国内状況のなかで起きた不可避の出来事である。 ミサイル危機以降、キューバ知識人に主体的な選択ができる局面は限られ、冷戦という大状況のなかで、東西のどちらかを「選ばされる」植民地特有の思考が、当時の文学作品から抽出された。しかも知識人はそうした大状況を知らない無知な大衆との距離を感じ、自殺あるいは亡命といった方法を「選ばされ」たり、あるいは政治権力に近づいて、自分の立場の安全を確保したりする。 ところが、はからずもその調査の途中の平成26年12月に、キューバがアメリカ合衆国と国交正常化交渉を開始するという大きな変化がもたらされ、新しい、また興味深いファクターを勘案する必要に迫られた。 新しいファクターとは、アメリカ合衆国以前にキューバを支配していた旧宗主国スペイン側からのキューバへの介入である。現段階ではキューバのソ連時代に関して絞って研究を進めているが、変わりつつある現状を意識しつつ進めることも必要であると考えさせられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、一本の論文を執筆し、研究会で一回口頭発表を行った。もう一本の論文の執筆を開始したが、年度内に書き上げることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、研究会で口頭発表を行ったプエルト・リコの事例についての文章化を推進するとともに、同時進行でキューバのソ連時代の資料がかなり収集できつつあるので、その分析を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
物品費については、科研採択に向けての資料購入がかなり進んでいたため、当初予定していた消耗品の購入を翌年に回すことにした。この措置は準備状況が予定より進んでいたことを示すものと考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は海外調査と適切な物品の購入を考えているが、無駄のないような支出を心がける。
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