2017 Fiscal Year Research-status Report
宗主国の交代と植民地―20世紀スペイン語圏カリブ地域文学における共同体意識の研究
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26370396
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
久野 量一 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (70409340)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | キューバ / 宗主国の交代 / 植民地 / 正典 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、キューバの「革命文化」が最も隆盛した1970年代の状況分析に主に焦点を当てた。この時代、伝統的な西欧モダニズムの影響を粛清しつつ、国民文化、いわゆる「正典」の構築が進められる。そのプロセスについての研究を行ない、急速に社会主義化が進む中で勃興したアンガージュマンとしての推理小説ジャンルを考察した。また、他のカリブ海地域(コロンビアおよびパナマ)における宗主国の交代をめぐる状況についての研究及び成果の公表を行った。ただし現地における調査は本務校の都合により、期間も短く極めて限定的な作業しか行えなかった。 成果としては、2017年6月に東京大学駒場キャンパスで行われた日本ラテンアメリカ学会の大会において口頭発表を行なった。また論文を一本執筆し、それは2018年3月に刊行された。さらに分担執筆を担当した『カリブ海世界を知るための70章』(明石書店)が2017年6月に刊行された。また2017年11月に日本コンラッド協会で招待講演を行い、コロンビアの植民地状況を描いた歴史小説に関し、成果を発表した。 資料の収集と分析については、主にキューバとアフリカの関係に関して集中的に行なった。国民文化の構築とともにキューバは今度は自らを宗主国として「革命」の輸出に努める。その相手として選び出されたのは、アフリカ、特にポルトガル支配のアンゴラである。宗主国の交代が主なテーマであったアンゴラ内戦へのキューバ派兵については近年多くの文化的生産物(映画や文学)が公にされていることを確かめている。今後分析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は研究課題についてキューバに関する部分について予定通りに進め、また派生的な他のカリブ地域に関する状況についても進捗した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる平成30年度は研究成果を公にすることを目標に進める。
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Causes of Carryover |
平成29年度は本務校の業務により極めて限定的な海外調査を行うことしかできなかった。次年度もさらに本務校の業務負担は増えることが予想されている。
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