2014 Fiscal Year Research-status Report
文学するニーチェ -散文と詩文の交差する領域に関する文体論的・韻律論的分析
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26370398
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
井戸田 総一郎 明治大学, 文学部, 教授 (40095576)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ニーチェ / パロディア / 文献学 / 詩学 / 牧歌 / ヨーロッパ |
Outline of Annual Research Achievements |
『悦ばしき智慧』の終曲「プリンツ・フォーゲルフライ」に掲載されているすべての詩の構造分析を終え、それに基づく翻訳の作業を遂行した。特にその冒頭詩「ゲーテに寄す」に関しては、ヴァイマルのゲーテ・シラー古文書館に所蔵されているニーチェ遺稿のなかの整理番号GSA71/144に存在する詩作ノートに遡り、ニーチェ自筆の手稿資料の解読を含めた分析を遂行した。その成果は、2015年5月に刊行される雑誌『文学』(岩波書店)に掲載される。詩作ノートの分析・紹介は日本で最初の試みとなるばかりでなく、当該資料はドイツにおいてもこれまで集中的に扱われることはなかった。従って、この分析の成果は、2015年10月にナウムブルクのニーチェ研究センターで開催される国際会議において、メイン講演の一環としても紹介する。 ニーチェの手稿資料を読み解いていく過程のなかで、ニーチェが『ズィルス・マリーア』を冒頭詩に置き、『ゲーテに寄す』、『ヴァーグナーに寄す』、『スピノザに寄す』などの詩を掲載する構想を持っていたことが明らかになった。このことは、ツァラトゥストラと一連の詩との関係を考える上で、大きな意味をもつことである。今後、これにつては考察を進める。 また、「プリンツ・フォーゲルフライ」との関連のなかで「メッシーナの牧歌」につぃても研究を進めており、これについてはヴァイマルのアンナ・アマーリア図書館で最初に掲載されたオリジナルの形態を発掘し、その結果、「プリンツ・フォーゲルフライ」の単なる前段階の作品群とみるのではなく、まとまった一つの詩群と見ることが重要であることが判明した。この時期ニーチェはヨーロッパについての記述を残しており、それらのテキストとの関係の分析が必要である、という新しい認識を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヴァイマルのゲーテ・シラー古文書館所蔵のニーチェ遺稿のうち整理番号GSA71/143、及びGSA71/144に収められている資料の全貌を、計画通り把握することができた。また、コペンハーゲン大学教授、ニーチェ協会理事のベネ教授とのコンタクトも、予定通り進んでおり(ただし当該年度中の訪日は教授の都合で中止)、2015年7月に東京において教授との議論を深めていく。これに関連して、2015年10月ナウムブルクで開催される国際シンポジウムにおいて、研究成果を発表・紹介する。また、計画書にあった、雑誌「文学」における研究成果の公開は2015年5月に実現する。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲーテ・シラー古文館のニーチェ遺稿の資料調査をさらに進めるとともに、ニーチェ遺稿資料の解読と分析を遂行する。アンナ・アマーリア図書館の協力を得て、ニーチェと文献学をテーマとした文献の収集に取り組む。Benne教授を初めととするニーチェ研究者、特にニーチェの文学的営為に関心を持つ研究者との国際的な連携を深めて行く。
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Causes of Carryover |
コペンハーゲン大学教授、ニーチェ協会理事のベネ教授を招聘する期間が当初の予定より遅れ、2015年7月に実施することになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年7月3日から18日の間ベネ教授は日本に滞在し、ニーチェ研究の動向などについての知見を教授してもらうが、日本への往復渡航費、滞在費、謝礼等を次年度使用額から支払う。
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