2014 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ詩テキストデータベースを用いた比喩の枠組語としての都市インフラ関連語の研究
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26370402
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Research Institution | Kagoshima National College of Technology |
Principal Investigator |
保坂 直之 鹿児島工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80280501)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ドイツ / 詩 / テキスト / データベース / 表現主義 / 比喩 / インフラ / ベルリン |
Outline of Annual Research Achievements |
A、B二つのアンソロジーを用いてフィルタリング用の都市インフラ関連語彙リスト作成の作業が進んだ(A: Fuenfzig Gedichte des Expressionnismus. Stuttgart, 2002. B: Gedichte des Expressionismus. Stuttgart 1991.)。それぞれの使用語彙を塊化し、品詞ごとにおおまかに分けて語形変化を取り除いてから重要語彙の拾い出しを行った。テキストファイル資料の拡充については[Gutenberg.de]Edition12(DVD版)から8924個のファイルを拾い上げることで累積2万超のドイツ詩テキストファイルを集約した。これらの作業で実践したunixのコマンドを使ったテキストファイル処理方法の概要について、その意義・効果を主張しながら口頭発表した。 表現主義のアンソロジーに加えて、Grossstadtlyrik(Reclam, 1999)等のアンソロジーからBahn, Bahnhof, Eisen, Berlinなどのキーワードでファイルを集約、それぞれ塊化して語彙の傾きを比較した。この検討で明るい色彩はなく黒が基調の色であること、鉄による曲げた造形が斬新であったはずの駅舎にいながらその構造・素材には注意が払われていないこと、20世紀初頭までに整備された高架鉄道・地下鉄なども詩語になっていないことが見て取れ、これを踏まえて表現主義詩人の使用語彙について論文化の準備を進めている。 テキストデータベースの文学研究への応用については、テキストを収めるフォルダの束ね方を変えて、作品群を一塊の語彙群にして観察する方法の効力をトラークルの連作研究で確認し、特に第1連作をまとめる働きをしているKaspar Hauserの詩が直前の小風景詩と組み合わされる構成法を使用語彙比較で明らかにして論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小さなレクラム版のアンソロジーを使ったフィルタリング用の語彙リスト作成は順調に進み、DVD版がそもそも電子ファイルに基づいているため、これを用いたテキストデータベース拡充の作業は予想を超える速さで進展した。次年度以降はこうして拡充した資料を公開するための著作権問題について、専門家の助言を受けながら解決して一般公開を目指す。また、テキストデータベースはそもそも「最低限の整形」の状態でデータを活用していく検索手法に軸足を置いたデータの活用方法だが、現状ではファイルの重複、フォルダ構成の不統一があり、最低限の整理作業がどこまで可能かについては見極める状況にある。 都市インフラ関連語彙リスト作成をまず進めることを重視したため、wie比喩のイメージ語との共起関係の検討などについては若干取り組みが遅れている。 また、コーパス分析のワークショップでコンコーダンサー(AntConc)を使った処理方法を紹介され、このツールを使った場合、Perlなどを使った単純な2語検索より作業が容易になる可能性があると考えている。比喩の枠組語との共起関係を見る作業のためだが、AntConcを試用している。 表現主義アンソロジーから語彙を取り出しリスト化しているが、扱う作品数が足りない実感がある。20世紀表現主義の作品と平行してGrossstadtlyrikと題するアンソロジー(この時代の叙情詩のジャンルとも言える)を都市インフラ関連語彙リスト作成のためのテキスト処理の対象に入れた。まだ処理作業の実際には入っていないが関連資料を収集して吟味する作業を当初の計画にはないが行った。 上記によって研究計画が大幅に遅れるなどのことはなく、概ね予定に沿った研究を進めているが、二年目以降の研究の進め方には若干の修正を加える余地を残している。
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Strategy for Future Research Activity |
・テキストファイルデータベースの拡充作業については、量的拡大よりも使いやすさのためのフォルダ構成の調整、重複したファイルの洗い出しなどを行う(この作業については外注を予定)。また平成27年度中に専門家からの助言を求めて著作権上の問題を解決し、テキストデータの公開(HP)の準備を進める。公開HPについては無理なく運営できるサービス提供者を決定する(管理の手間を考えてブログ的な仕組みで無料公開できるサイト提供者を探す)。 ・比喩の枠組語となりうるインフラ関連語リストを拡充する。「大都市叙情詩(Grossstadtlyrik)」というジャンルのアンソロジー数点は前年度にベルリン州立図書館から電子データを入手してあるので、平成26年度までに作成した表現主義アンソロジーの語群と結びつけて検索候補を広げながら、wie比喩イメージの語彙との相互検索を進める。 ・平成27年度は、上記検索結果と語彙リストに照らして、トラークルのAbendland以降の詩(Der Brenner誌に発表されたベルリン滞在期以降のもの)を再解釈して論文化する。リリエンクローン、ラスカー・シューラー、ベン、ホディスの集約済みテキストファイルデータを塊化した語彙リストを用いて、上記検索結果と照らし合わせて比喩の枠組語としてのインフラ関連語リストの適正化を図る。合わせて表現主義詩人の表現論を整理する準備を進める。 ・平成28年度の計画になるテキストデータを用いた研究方法一般についての報告・論文化についても準備を進める。
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