2014 Fiscal Year Research-status Report
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26370403
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 徳也 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (10213068)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 周作人 / 審議主義 / 儒家 / 頽廃派 / 中国語圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度末に、周作人宛の日本文人の書簡約1500通が公開されたというニュースが発表され驚かされたが、夏には、周作人の審美主義に深く影響された彼の弟子筋の文人たちに関する優れた著書(高恒文《周作人与周門弟子》)が刊行され、当初計画よりも、周作人とその周辺に研究を集中することになった。周作人とその儒家的な文弱性、そして、彼の頽廃派文人への共感と「生への意志」の関係に対して考察を加えた。特に周作人のニーチェ(及び「力への意志」)に対する態度(1920年代から反発嫌悪)は、その後大きな影響力を持った周作人の審美主義に対して、深い陰影を与えることになったと思われる。 周作人以外では、キーパーソンの一人である辜鴻銘、徐志摩およびその周辺に対する考察を深めた。一方、消費文化の影響力が強まった1980年代以降の中国語圏の文化状況については、資料を博捜し、何部かの重要な文献を入手した。本研究課題を考究していくうえで、文学映画研究のみならず、カルチュラル・スタディーズや文化社会学の成果をうまく利用していく必要があることを確認した。 また、日本の文化状況に対する研究や評論が、中国語圏のそれに対する研究に大きな示唆を与えることに気づいたので、日本の文化状況に対する研究や評論の収集、分析に努めた。本研究課題を考究するうえでの歴史的枠組みは、基本的には、20世紀初頭から現在のおよそ100年間であるが、作家文人・美学者の審美主義と大衆的な美意識や価値観を捉えるうえで、国民国家建設、「俗語革命」、共産主義・プロレタリア文化運動の進展を巨視的に捉えておくことの必要性が痛感された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画はいわばのっぺりした抑揚のない総花的な計画だったが、いくつかの重点の置き所がはっきりしてきたので、一見当初計画に及ばないように見えるかもしれないが、むしろ、現実的に成果があげるための目鼻がついてきたので、その意味で、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究過程で、研究を集中すべきところがはっきりしてきたので、マクロな研究枠組みを見失わないよう留意しつつ、ポイントである周作人研究と、日本文化研究・評論を参照した中国語圏文化研究に注力していく。
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Research Products
(2 results)