2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370406
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
澤崎 久和 福井大学, 教育地域科学部, 教授 (70145100)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 白居易受容 / 晁迥 / 法蔵砕金録 / 擬詩 / 白氏文集 / 北宋 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は以下の論文執筆・研究発表・資料調査等を行った。 まず、晁迥『法蔵砕金録』のテキスト収集と書誌的検討については、明・嘉靖刊本・四庫全書本等を収集校訂し、全十巻のテキストファイルを作成した。このうち白居易関係の箇条である56章については、『白氏文集』所収作品によって逐一出典調査を行い出処を明らかにした。これにより、晁迥が白居易の詩文を広くまた深く受容している様子が確認できた。またこの過程で、今日に知られていない白居易の作と推測される詩句1点を見出した。北宋本『白氏文集』との文字の異同については、なお顕著な相違を見出していない。 研究論文としては、「晁迥『法蔵砕金録』と白居易詩文初探」(『白居易研究年報』第15号,78-101頁)を発表した。これにより、『法蔵砕金録』に引用される白居易詩文とこれに対する晁迥の擬詩(白居易の詩に擬えて創作した詩)の概要を示し、本書が文学史的に見て白居易の詩に対するまとまった形での最初の批評であり、宋初における白居易受容において大きな意義を有することを明らかにした。 研究発表については、東山之会例会(2014年12月13日)において「宋初における白居易詩文の受容―晁迥『法蔵砕金録』を中心に―」と題して発表し、北宋における白居易受容に関して諸家と意見交換して検討を行った。資料調査については、国立公文書館にて内閣文庫蔵『法蔵砕金録』十巻(明・嘉靖刊本両種)・『晁文元道院集要』三巻(明・嘉靖刊本)・『具茨晁先生詩集』(同前)を調査し、複写して校訂に使用した。 この他、晁迥自身の全詩のテキストファイルを作成した。現在、上記の白居易関係詩文56章について、順次訳注を作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象とした北宋の作品のうち、26年度は『法蔵砕金録』十巻について予定通りテキストの調査収集を行い、全部を校訂してテキストファイルを作成し終えた。 また、十巻の中から白居易関係詩文を抽出し、『白氏文集』によって出処を明らかにし、『法蔵砕金録』における白居易受容の概要を提示することができた。そのさい、先行研究を吟味しつつ晁迥の擬詩の意義についても新たな知見を示すことができた。また、従来未見の白居易詩文の一部と推測される詩句を見出した。これらの成果を研究会で発表するとともに、白居易研究の専門誌『白居易研究年報』に「晁迥『法蔵砕金録』と白居易詩文初探」と題して発表した。 以上により、26年度は本研究の課題である「北宋における白居易受容」についてほぼ所期の成果を得ることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度の主たる検討対象である『法蔵砕金録』については、すでに抽出と出典調査を終えた白居易詩文が含まれる箇条に関して順次注釈を施し、公刊していく作業を継続する。 27年度の主たる検討対象は、白居易詩文を多量に含んでいるいま一つの北宋刊行の書である陳舜兪『廬山記』五巻である。『廬山記』についてもまず基本的なテキストの収集整理と校訂を行う。『廬山記』については宋代の刊本を存する他、多数のテキストを存するため、『白氏文集』諸本の校訂に資すること、及び陳舜兪が手にしていたテキストの性格を明らかにすることが課題となる。さらに、『廬山記』には地理的記載が豊富に含まれるために、廬山に住まった白居易に関する陳舜兪の関心と理解の実態を解明する。これらによって、『廬山記』における白居易受容の特色と意義について解明する。 上記の課題と共に、前年度の『法蔵砕金録』と同じく、『廬山記』に含まれる白居易関係箇条について注釈を施す作業に着手する。
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Causes of Carryover |
物品費において年度末時点で端数が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の使用計画に加算して使用予定。
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Research Products
(2 results)