2015 Fiscal Year Research-status Report
台湾変革期における中国から受容された2度の大正文学の影響に関する研究
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26370413
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
工藤 貴正 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (80205096)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大正生命主義 / 張我軍 / 『台湾民報』 / 戦後台湾 / 大正デモクラシ- / 雷震 / 『自由中国』 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、研究課題「台湾変革期に中国から受容された2度の大正文学の影響に関する研究」の中、「中国から台湾に渡った大正生命主義のゆくえ」というテーマを念頭に、昨年度集めた資料を中心に学会と国際シンポジウムでの発表を行った。2015年6月に天理台湾学会第25回記念大会において、「『台湾民報』に散見する大正生命主義の意義―台湾における所謂「中国新文学運動」成果の受容を検討の軸に」の発表を行った。また、2015年11月に台湾・輔仁大学日本語文学科主催の「東アジアと同時代日本語文学フォーラム」国際シンポジウム「文化翻訳/翻訳文化」において、「北京から台湾にやって来た大正教養主義―『台湾民報』における張我軍の時差翻訳を視座として」というテーマで研究発表を行った。更に、2016年3月に、「戦後台湾の民主主義:雷震と大正デモクラシー」に関わる資料を収集のために、台北の国立国家図書館と台中・静宜大学蓋夏図書館を訪ね、日本では入手困難な『雷震全集』全45巻の中、「雷震回憶録」2巻、「雷震文選」6巻、「雷震専集」2巻の資料と、胡適と雷震が主編した雑誌『自由中国』全23巻を中心に資料を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、昨年度収集した資料を中心に国際学会で発表を行い、貴重な意見が得られた。そこでこの意見を反映させ、下記の論点を明示し、論文に修正と加筆を加える。 現在までの成果は、張我軍が編集を担当した1925年1月から1926年6月まで『台湾民報』の翻訳を通して、(1)中国の『新青年』に展開された「文学革命」とその延長にある「中国新文学」の作品には、大正生命主義の影響が顕著であること、(2)定論である「台湾新文学運動が中国新文学に影響を受けた」とされるのに、張我軍以外の知識人には大正生命主義の影響がそれほど認められないこと、(3)張我軍の翻訳には大正生命主義の崩壊と変容が色濃く留められていることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、現在までの成果を纏めて、「張我軍と『台湾民報』―大正生命主義の受容と崩壊」といい論文を作成する。さらに、『雷震全集』を読み進め、「雷震のおける大正デモクラシーの影響」を検証し、戦後台湾の民主主義が「中国から来た大正デモクラシーの影響」があったことを解明する。さらに、上海図書館において、中国に帰国後の雷震の経歴と中国における「大正デモクラシー」について調査し、日本と台湾の学会で研究発表を行う。
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Causes of Carryover |
ほぼ全額を使用している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用計画に変更は無い。
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