2015 Fiscal Year Research-status Report
浙江金華口承文藝研究 ―語りもの藝能「金華道情」を中心に―
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26370418
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
松家 裕子 追手門学院大学, 国際教養学部, 教授 (20215396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯部 祐子 富山大学, 人文学部, 教授 (00161696)
小南 一郎 公益財団法人泉屋博古館, その他部局等, その他 (50027554)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 金華道情 / ブ[務+女]劇 / 浙江 / 宝巻 / 目連 / 花名宝巻 / 太平宝巻 / 勧善 |
Outline of Annual Research Achievements |
金華道情を中心とする金華の民間文学のありかたについて理解を得る、という目的のもと、平成27年度に行なった研究の実績について、次の①②③の3つに分類して述べる。 ①【金華道情の実地調査・文献調査およびその報告】a8月に2日間、11月に2日間、計4日間、金華市郊外のレイ[シ+豊]浦鎮において、調査を行なった。4日間すべて、国家から金華道情伝承者に認定された朱順根さんを対象に、その上演に接し、また聴き取り調査を行なった。すでにテキストに書き起こされた演目を、とくに依頼してこの調査のために上演していただき、書面のテキストと口頭のテキストが比較可能になったことが、特筆すべき点である。b金華道情のテキストの翻訳を進めている。c2012年と2013年の調査について、その報告を発表した。 ②【金華の地方劇ブ[務+女]劇の文献調査およびその報告】前年度以前に行なったブ[務+女]劇の実地調査をもとに、民間の演劇が清の宮廷演劇の影響を受けていることについて、学会において発表した。 ③【道情と同じく講唱文学(「説唱文学」)に分類される「宝巻」をめぐる文献調査およびその報告】 a「目連もの」の宝巻について、韓国高麗大学図書館所蔵の『大目連経』の文献調査を行い、その校勘・訳注と、これにもとづく「目連」伝承の宋代におけるありかたについての論文を発表した。b現在も紹興で宣巻として行なわれている『花名宝巻』と『太平宝巻』について、テキストの比較などから、その社会的機能について、論文発表(前者)や口頭発表(後者)を行なった。 上記の研究をとおして得られた知見は多いが、このうち、宗教性の有無では対極にあると考えられた金華道情と紹興宣巻が、「勧善」という共通のキーワードをもつことがわかったことは、中国の講唱文学(説唱文学とも)全体にもかかわる問題でもあり、ここにとくに記しておきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実地調査では、8月に2日間、11月に2日間、金華道情の実地調査を行ない、多くの知見を得ることができた また、文献調査では、金華道情について、その翻訳を進め、あわせて文献資料によって広く道情についての調査を行なった。また、宝巻を中心とするその他の講唱文学について、図書館における調査をはじめとする各種文献を用いた調査を進めた。 また、如上の研究の成果の一部を公表した。 これらによって、(2)おおむね順調に進展している、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行なってきた、金華道情、ブ[務+女]劇、そして、宝巻を中心とするその他の講唱文学について、実地調査と文献調査を継続する。 とくに、平成28年度は、本研究の最終年度にあたり、この研究グループがこれまで2回の科研費研究で行なってきたように、冊子体の報告書を作成する。そこには、これまで発表した関連の成果を再録するとともに、平成27年度の調査報告および金華道情のテキストの翻訳を作成して、掲載する予定である。 考察にあたっては、文学のみならず、歴史学領域の資料も使用し、金華という場所、清という時代、とくに王朝主宰の勧善儀礼「宣講」などとの関係も見据えたい。 本研究の中心となる研究対象である金華道情は、その担い手が多く盲人であり、したがって、そのテキストには、文献の世界に表された「中国文学」に見られない、多くの特徴がある。最終年度は、テキストの世界にできるだけ深く踏み込み、中国の講唱文学あるいはより広く中国文学全体を視野に入れて、金華道情の見方を提出することを目ざす。
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Causes of Carryover |
3月に紹興に赴き調査を行なおうとしたが、国内における予定がさだまらず、中国方への連絡が遅くなったこともあり、実現しなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査旅費に充当する。
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