2014 Fiscal Year Research-status Report
21世紀的視座から見る北アフリカ(チュニジア・アルジェリア)の現代文学状況
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26370423
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
青柳 悦子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70195171)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / アルジェリア:チュニジア / 北アフリカ / フランス語圏文学 / ポストコロニアル / 世界文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は基礎的な作業として、2010年以降のチュニジアおよびアルジェリアの状況のついて、広く概観するとともに、近年に出版された注目作品を収集し、資料整理をおこなった。そのなかでもとりわけチュニジアの小説家イムナ・ベルハジ=ヤヒヤの評論的著作『チュニジア、私の国の諸問題』(Tunisie Questions a Mon Pays、2014)を通じて、チュニジア革命とその後の変動の最中の現状を、チュニジア人自身がチュニジア史のなかにどう位置づけ、この社会を特徴づける諸問題をどのように捉えているのかに着目した。さらに同作家の小説作品の問題設定と意義および文体的特徴について世界文学的観点から論じたフランス語論文を執筆・発表した。またアルジェリアについては現在に至る、アルジェリア文学研究の偏りを検証するためにも、アルジェリア文学の始祖といわれるムルド・フェラウンの長らく伏せられてきた遺作小説『記念日--薔薇の町』(L'Anniversaire, ou La Cite des roses, 2007)について、この作品が未刊行にとどめられた経緯や、フランス人研究者によっては論じられてこなかった特質などについて、改めて論究し、この小説が近く再刊されるにあたっ序文として付すよう原稿(フランス語)をムルド・フェラウン協会に送った。さらに、フランスの大手出版社スイユ社が、フェラウンを始めアルジェリアの作家たちをどのように遇し、出版の是非を審議したかを、フランス・カーンにある現代出版アーカイブIMEC(Institut memoires de l'edition contemporaine)に所蔵されている資料にあたって直接研究した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
勤務校で役職(比較文化学類長)に就任したため、研究にかけることのできる時間をみつけることがかなり難しくなり、業務の合間をぬって活動を行わざるを得なくなった。 また、中東情勢全般の緊張により、2015年2月に計画していたアルジェリアでの調査・研究交流を直前で中止せざるを得なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2010年以降現在に至るチュニジア・アルジェリアの文学状況、出版状況についてさらに資料収集や調査を続けるとともに、主要な作家の作品・著作の分析に入る。とりわけチュニジアでは、Emna Belhaj Yahia, Cecile Oumhani、Wahia Khirariら女性作家に着目し、アルジェリアに関しては、現代社会に対して尖鋭な批判をおこないつづけているSalim Bachi、Boualem Sansal およびRachid Boudjedraの文学作品および批評著作を総合的に分析する。 チュニジア・アルジェリアの現地への渡航については、情勢を慎重に見極めつつ、可能性をさぐる。一方メールほかの方法や、現地から日本への研究者の呼び寄せに協力するかたちで、本研究にとっても有効な機会とする。 また、アジア諸国のマグレブ研究者と交流するなど、北アフリカ研究をより広い世界的視野のもとに置き直すことを試みる。 新たな研究成果について、日本語およびフランス語での口頭発表、論文発表をおこなう。
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Causes of Carryover |
2015年2月の調査・研究交流渡航では、フランスとアルジェリアへの滞在を予定していたが、中東情勢の悪化により、安全の確保が確実ではないため、アルジェリアへの渡航を見合さざるを得なくなった。そのために出張期間を短縮するなど、旅費に残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
世界情勢を見ながら渡航計画を立てるとともに、フランスなどで周辺地域での研究交流を試みるか、日本からおこないうる資料収集によって、研究を遂行する。 平成27年度は、資料の収集、現地および周辺地域での調査、研究交流、成果発表交流をおこなうとともに、研究遂行に必要な基礎的な機器を購入する。
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