2015 Fiscal Year Research-status Report
メディア横断的物語更新理論を応用した現代表象文化の受容形態の解明
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26370426
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
片渕 悦久 大阪大学, 文学研究科, 教授 (30278147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鴨川 啓信 山口大学, 経済学部, 教授 (60314788)
橋本 安央 関西学院大学, 文学部, 教授 (60300274)
飯田 未希 立命館大学, 政策科学部, 准教授 (90572438)
小久保 潤子 大妻女子大学短期大学部, その他部局等, 助教 (50441522) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 物語更新論 / アダプテーション / 表象文化 / 物語論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究課題である現代表象文化における物語の受容形態を解明するため、研究対象をより広範に求めることで物語更新の現象をさらに明確化する作業を軸として研究を進めた。こうした課題の遂行のために、分析対象とする物語テクストに関して物語更新の概念からみた共通要素を見出す過程に注目し、必要となる先行研究等の資料収集とそれらの分析につとめた。具体的には、日本、欧米その他対象となる物語テクストの分析、先行するアダプテーション研究やメディア横断、認知物語論関連の研究書、論文の参照、また研究対象となる物語テクスト(文学作品に限らない)の収集と分析を行った。これらをもとにして、具体的分析と考察を行い、可能なものから随時論文原稿へまとめる作業を進めた。 本年度の研究成果のうちで特筆すべきものとしては、研究代表者片渕が出版した『物語更新論入門』があげられる。当該図書は、片渕がこれまで本研究課題に関連して発表してきたシンポジウムの原稿や講演原稿等を再構成したものである。その内容は、物語の定義から物語論の歴史と現在、物語更新の概念的説明を土台として、物語更新論の実践までを解説する啓蒙的理論書となっている。 他の研究分担者も、それぞれアダプテーション理論、比較文学、ジェンダー研究等の分野で、各研究領域と物語更新論の接続可能性をにらみながら、引き続き研究発表や論文執筆の準備を遂行している。特筆すべきは、物語の反復再現をアダプテーションおよび物語更新の概念から解明した鴨川の単著『グレアム・グリーンの小説と物語の繰り返し』をあげておきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究対象の明確化に引き続いて、対象とする物語テクストに関して物語更新の概念からみた共通要素を見出す過程で、必要となる先行研究等の資料収集とそれらの分析につとめ、その分析・考察を進めることが主な研究課題であった。これに関しては、より広範な物語更新の現象を観察することができたこと、また本年度までに得られた知見を土台としして、物語更新と現代表象文化における物語の受容に関する理論書を発表できた点で、おおむね研究は順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本研究課題の最終年度にあたる。したがって、研究最終年度の最大の課題として、集大成的な業績を残したいと考えている。具体的には、研究代表および研究分担者による共著英語論文の執筆と完成、海外の物語論関連の専門学会誌への投稿をめざす。また、本研究課題の終了時、もしくはその後に研究代表者と研究分担者全員を中心とした、物語更新論に関する共著による図書の出版を構想しており、そのための準備作業も進めたい。
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Causes of Carryover |
本研究課題の継続的な発展および充実をはかるうえで不可欠であると判断される部分、とりわけ研究最終年度でとなる次年度に共同執筆予定の英語論文等の校正費、またこれとは異なる物語更新関連の研究論文執筆のための資料調査等を目的とする海外出張等に見込まれる費用を担保するため、本年度の研究費の執行を抑制することを考慮した。これにより、本年度の実際の執行額は当初予定していた見込み額とは異なることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記にあげた諸理由にもとづき、研究年度3年での総合的な予算の執行を見越した支出の抑制は、実際の研究遂行に支障をきたさない範囲で行ったものであり、今後の研究計画そのものに対する変更はまったく考慮していない。本年度の残額を次年度分として請求した助成金と合算して、物語更新に関連した資料収集、論文執筆に関する研究調査のための旅費、ウェブページの更新費用等に有効に充当していく計画である。
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Research Products
(7 results)