2014 Fiscal Year Research-status Report
災害表象とドキュメンタリー表現の変容――都市・環境・テクノロジーの政治学と倫理
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26370431
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
中垣 恒太郎 大東文化大学, 経済学部, 准教授 (80350396)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 災害表象 / エコクリティシズム / ドキュメンタリー / テクノロジー / 都市 / 環境 / メディア・リテラシー / 表現と倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災および原発事故が発生した「311」以後の世界のあり方を、様々な角度から捉え直す動きが進んでいる。本研究課題は、こうした現代文明を問い直す流れを受けて、日本・アメリカを中心とする「災害表象」をエコクリティシズムの観点から読み直すことにより、「都市・環境・テクノロジーの政治学と倫理」の問題に対する分析を試みることを目指している。 研究課題1年目となる平成26年度は、アーカイブ構築、他の研究者との情報交換を密に行うことを意識することを目的とし、日本映像学会ドキュメンタリードラマ研究会を発足し、発起人として関与した。映画監督・堤幸彦は毎年、東日本大震災の被災地・気仙沼を訪れ、「ドキュメンタリー・ドラマ」の手法で一年毎に被災地に暮らす人々の様子を描くプロジェクト『Kesennuma, Voices. 東日本大震災復興特別企画~堤幸彦の記録(1~4)』(2012-15)を展開している。中でも第4作では震災による津波で妹夫婦を亡くしたアナウンサー、生島ヒロシがプロジェクトで語り手役をつとめてきた二人の息子と共に郷里を訪問する試みを通して、過去の記憶・光景と現在・未来が重ね合されている。 この作品研究の成果として、日本映像学会2015年度全国大会での研究発表を予定している(2015年5月)。 また、共著論文として、「災害文学の想像力――ハリケーン災害表象から見る都市・環境・テクノロジーの政治学」『文学を環境から考える――エコクリティシズムガイドブック』小谷一明・巴山岳人・結城正美・豊里真弓・喜納育江編(勉誠出版、2014年11月、116-34頁)を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定している単著(『エコクリティシズムで読み解く日米大衆文化――ポスト工業化社会における核・ジャンク・廃墟の想像力』)は遅れ気味であるが、平成27年度中の草稿完成を目指して引き続き準備を進めていく。 ほか、日本映像学会全国大会をはじめ研究発表を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに進行中の出版企画である『ハリウッド映画を通して学ぶアメリカ文化・社会・歴史』、『エコクリティシズムで読み解く日米大衆文化――ポスト工業化社会における核・ジャンク・廃墟の想像力』を含めた本研究課題の成果を出版企画立案に繋げ、研究期間以内に刊行できるように準備していく。そのために研究成果を国内外の学術雑誌に投稿する準備を進めていく(日本映像学会『映像学』、日本映画学会『映画学』、日本アメリカ学会『アメリカ研究』、表象文化論学会『表象』、国際表現文化学会『Expressions』、文学環境学会『文学と環境』、エコクリティシズム研究学会『エコクリティシズム研究』など)。本研究課題の成果をもとにさらなる単著・共著での出版企画につなげることを構想している。 これまでの研究課題で取り組んできた、「リアリティTV」研究に力点を置いた最新のメディア/ドキュメンタリー状況を概観・分析する試みを踏まえつつ、さらに本研究課題の成果をもとに、ドキュメンタリー表現の歴史・発達にまで目を向ける単著での出版企画をまとめていく。 また学際的なシンポジウムなどを軸にした、共著での研究成果としての「災害表象」研究を構想したい。出版企画の方針としては、当該領域における最新かつ高い水準の研究成果として結実させていきたい。
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