2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370432
|
Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
三田 明弘 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (00277865)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 鬼 / 幽霊 / 狐 / 太平広記 / 冥報記 / 今昔物語集 / 説話 / 志怪 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究二年目となる今年度は、計画書に提示した通り、中国各時代の鬼文化・冥界観と志怪小説の関わりの解明を主要な研究内容とした。具体的には、(1)説話データベースの充実、(2) 唐宋及び五代十国期の政治・宗教・思想・社会状況と鬼文化・冥界観の関連及びその志怪小説への影響の分析、の二つの方向から作業した。 (1)説話データベースの充実については、昨年度に引き続き、『太平広記』鬼部説話のデータベース構築作業を進めた。六朝及び元明淸志怪小説の情報を入力し、データベースをより立体的な奥行きのあるものへと発展させ、鬼文化と神仙文化の関連性を明らかにし、その成果の一部を論文「『太平広記』鬼部説話の構成‐鬼十一~鬼十五‐」として発表した。また、狐に対する信仰やイメージに鬼文化と類似する点があることから、新たに『太平広記』狐部のデータベースを作製し、狐文化と鬼文化の関係性について分析を行った。その成果が、論文「『太平広記』狐部説話の構成」である。 (2) 唐宋及び五代十国期の政治・宗教・思想・社会状況と鬼文化・冥界観の関連の分析については、宋代を代表する説話集『夷堅志』、説話以外の唐宋代資料、諸分野の最新の研究成果を活用し、鬼文化・冥界観の歴史的変遷の分析を行い、さらに、その志怪小説への反映について、個々の事例を検証した。その研究成果の一部を論文「『冥報記』崔彦武説話と『滑州明福寺新修浮図記』『今昔物語集』」として発表し、唐代の朝廷や地方における政治的思惑が鬼文化を利用する現象を具体的に提示するとともに、日中の鬼に対する理解の相違点についても言及した。 これら(1)(2)に関する分析作業のため、国内各地や、中国・台湾・英国等において鬼文化に関する諸資料の収集や実地調査を行い、さらに来年度以降に予定している韓国やインド等の鬼文化分析のための資料も入手し、解読を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究実績の概要】に於いて述べたように、当初の研究計画に大きな変更を加える事なく、予定していた作業を実施することが出来た。また、その成果を昨年度の成果の上に積み上げることにより、論文や学会発表を通しての研究成果の公開数も昨年度を上回り、次年度以降の研究のスムーズな展開のための有益なデータや分析結果も多数得られたために上記の評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究における一つの柱は、「鬼文化」「冥界観」からの日本の説話集とその周辺の再検証である。具体的には、データベースにおける日本の説話・謡曲・読本・随筆等の情報を増やし、鬼説話・冥界説話を抽出し、仏教や神道・民間宗教との関連性を分析する。 日本における鬼文化の再検証においては、十王思想の流入など、日本における道教文化の受容の解明と、その影響についての分析も重要な要素となる。また、インド・韓国などで編纂された説話集にみられる鬼文化・冥界観念の分析を併せて行う。
|
Research Products
(7 results)