2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370433
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
森田 典正 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (50200423)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 世界文学 / 村上春樹 / 比較文学 / 受容論 / 翻訳論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度においては、新たな展開をみせる「W文学」にかかわる論議をフォローするとともに、「W文学」の理論・方法論の初期からの歴史的展開をあとづける作業を行った。27年度中だけでも、「W文学」を理論的に論じた書籍、論文は多数にのぼり、その主要なものには、_Institutions of World Literature_, _Forget English!: From Antiquity to the Present_, _What Is a World?: On Postcolonial Literature As World Literature_, _Born Translated: The Contemporary Novel in an Age of World Literature_, _Against World Literature_などの他、 _Journal of World Literature_に掲載された幾多の論文があげられる。近年の特徴は、「W文学」論の誕生から20数年の歳月を経て、反グローバリゼーション、ポストコロニアル論、オリエンタリズム批判の立場から、これに批判的な主張を展開する著作が急増していることである。しかしその一方で、ハーバード大学での「世界文学研究所」の設置により、David Damrosch教授の立ち上げた形の「古典的」W文学研究もますます盛んに行われれていることも事実である。 また、本年度は本研究の研究計画にのっとり、村上春樹の英語およびイタリア語への翻訳者として、もっとも、重要な、それぞれ、ジェイ・ルービン氏とジョルジョ・アミトラーノ氏へ、長時間のインタビューを行った。一方で本年2月に『世界文学としての村上春樹』が出版されたが、「W文学」論の徹底した応用を用いる本研究とは、アプローチにおいて、また、思想においておおきく異なるものであることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題採択(平成26年6月)後、11月に大学の大きな役職についたため、平成26年度後半、そして、平成27年度と、当初、予定していたエフォートを達成することができなかった。文献研究については、おおむね順調に進展しているが、とりわけ、一定の時間的拘束をともなう、海外での聞き取り調査や、研究のまとめと、論文化が、予想以上にできていないのが反省点である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は本研究の最終年度であり、現在までの進捗状況とその反省を踏まえ、大学の休業期間を利用して、精力的に聞き取り調査を行っていきたい。資料や、これまでの成果のまとめ、また、録音テープの文書化等については、RAなどの助けをかりながら、速度を上げる一方、本研究のプロジェクトや成果を引き継ぐためのW文学研究所発足の準備を始めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
謝金が発生する専門知識の提供等は27年度中に行われているが、会計処理が年度をまたいだため、支出額が0になっている。また、全体として支出額が交付額の半分程度となっているが、これは本研究に費やすべきエフォートが少なかったためである。本年度は研究の最終年度にあたるため、エフォートを大幅に伸ばして、使用額も増やしてゆくつもりである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費を占めるのはほとんど書籍代であるが、本研究課題に関連する書物の出版やジャーナルの発行があいついでいるので、収集を早めていくつもりである。また、旅費については、ヨーロッパ、台湾(村上春樹研究所)、韓国出張にあてる予定である。謝金については、翻訳者や編集者への聞き取り調査にたいする謝金、また、W文学研究所設置の準備にかかわる人件費にあてる予定である。
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