2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370434
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 渉 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (90293117)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 格 / 格階層 / 有標性 / コントロール構文 / 役割指示文法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は不定詞補部の格フレーム,特にコントロール構文に生じる不定詞補部の主語の格標示の通言語的変異を,主格標識付与規則の適用領域及び格標識の有標性に基づいて統一的に説明することである。 今年度はロシア語、アイスランド語のコントロール構文(主語コントロール構文、目的語コントロール構文)が伴う不定詞補部の意味上の主語の格標示に焦点を当てた。両言語の非主語(目的語)コントロール構文の不定詞補部の意味上の主語はロシア語が与格標示、アイスランド語が主格標示である。このコントラストを。①格付与領域の相違(役割指示文法の節の成層構造において、ロシア語は節を格付与領域に指定し、アイスランド語は中核を格付与領域に指定している)、②格標識の有標性階層(主格>与格>対格>属格)、から導くことができた。具体的には、ロシア語では格付与領域が節であるため、中核に相当する不定詞補部の意味上の主語には主格標識を与えることができない。このため、格標識の不在を避けるため、最後の手段として主格に次いで無標的な格標識である与格標識が不定詞補部に与えられる。これに対して、アイスランド語では、格付与領域が中核であり、目的語コントロール構文における不定詞補部も中核に相当するため、不定詞補部の意味上の主語も節全体の主語と同様に主格標示を受ける。 また、ロシア語、アイスランド語と同じ印欧語に属する現代ドイツ語の代名詞パラダイムが伴う目的語上の格交替(対格/与格/主格)に注目し、代名詞パラダイムに目的語の意味上の有標性と格標識の有標性が対応する有標性同化が見られることを指摘し、格階層の有効性(与格標識が主格標識より有標的であるが、対格標識より無標的であること)を再確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたロシア語とアイスランド語の不定詞補部の意味上の主語の格標示の相違(ロシア語の非主語(「目的語」)コントロール構文が伴う不定詞補部の意味上の主語の格標示が与格であるのに対して、アイスランド語の同構文の不定詞補部の意味上の主語の格標示が主格であることを、両言語の格付与領域の相違(ロシア語=節、アイスランド語=中核)及び格階層が規定する格標識の形態的有標性から導くことができた。また、格標識の形態的有標性(格階層)の印欧語における妥当性を、ドイツ語の代名詞パラダイムにおける目的語上の格交替を説明する論文により、確認することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで考察対象とした言語は、アイスランド語、ロシア語、ドイツ語であったが、考察対象を印欧語の外部、具体的には、フィン・ウゴル諸語(例:フィンランド語、ハンガリー語、エストニア語)に移す。現代のフィンランド語、エストニア語には与格に相当する格標識が存在しないが、フィンランド語では属格標識、エストニア語では分格標識/接格標識が不定詞補部の意味上の主語を標示することが知られている。 これらの言語の不定詞補部の格標示を導くためには、格階層を相対化(たとえば、主格に次ぐ無標的な格標識を与格標識に固定するのではなく、主格に次いで無標的な格標識と規定する)すると同時に、格階層を用法基盤的に導く必要がある。
|
Research Products
(3 results)