2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370444
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
高垣 敏博 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (00140070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 博人 東京大学, その他の研究科, 教授 (20114796)
宮本 正美 神戸市外国語大学, 付置研究所, 名誉教授 (20131477)
福嶌 教隆 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (50102794)
R・TINOCO Antonio 上智大学, 外国語学部, 教授 (80296889)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 統語論 / 言語地理学 / 言語バリエーション / バラメーター / アンケート調査 / スペイン語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、スペイン語の文法研究の中で問題となる統語現象(叙法、人称代名詞、再帰代名詞、関係詞、性・数の一致、語順、ボイスなど20程度のテーマが含まれる)の使用実態を地理的バリエーションの観点から捉えなおし、現象ごとの具体的データをアンケート形式で収集した上で、言語学的に分析し、スペイン語文法研究に新たな研究方法を提示することが目的である。スペイン語は23の国と地域で用いられる広域使用言語であるため、そのうちスペインとラテンアメリカにおける30地点(都市)において共通の文法変異アンケートを実施し、得られた成果を数値化し、地点相互に比較・相対化することにより、これまで前例のない「スペイン語文法」のいわば「文法地図」を作成し、文法研究に新たなパラメーターを導入する目標をもつ。 初年度の26年度は、今期にいたる長年の成果の評価に集中した。10月にスペイン語言語学の泰斗であるマドリード・コンプルテンセ大学教授・スペイン王立アカデミー会員のイグナシオ・ボスケ博士、および、スペイン高等研究所(CSIC)のフアナ・ヒル・フェルナンデス博士の両名を日本に招き、意見・批判・提案などを受けることができた。 また、本年度27年11月には、バルセロナ大学名誉教授のエンマ・マルティネル博士を招き、詳細にわたり、本研究の評価を受けた。これらの指摘をふまえ、新たな視点を加えることができる。また、本研究についてはスペイン本国でも評価を受けているところであるが、バルセロナ自治大学文学部のアンヘル・ガジェゴ氏が推進するコーパスによるスペイン語統語研究プロジェクトとの共同研究への呼びかけも受けた。今後、さらに国際的に連携を進めるとともに、個別の文法現象ごとの詳細な分析に移っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の実施計画は、これまで現地調査で収集してきた統語バリエーションのアンケート調査のデータ分析に関して、スペイン語の言語学研究の第一人者であるイグナシオ・ボスケ教授およびフアナ・ヒル・フェルナンデス教授に評価をうけることにより、問題点をより明確化させることができた。 さらに平成27年度は、スペイン語言語学会の元会長であるエンマ・マルティネル名誉教授からも建設的なご意見を賜ることができ、本研究の方向性をより明確化させることができた。 加えて、スペイン語研究の中心拠点のひとつでもあるバルセロナ自治大学からコーパスの観点から本研究と同様の目的―すなわち、地理的バリエーションに基づくスペイン語研究―で共同研究の提案を受けた。この連携をも見据えると、本研究の達成度は順調に進展しているといえるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでラテンアメリカでは北米のメキシコ、南米の全スペイン語国の首都、中米コスタリカ、カリブ地域のキューバおよびプエルトリコ、またスペイン10都市においてアンケート調査を実施して順調に成果を上げてきた。これまで治安上の問題で調査を実施できなかった地点のうち可能性がある中米のいずれかとカリブ地域のドミニカ共和国における調査を計画しているが、同時にこれまでの結果を分析していく上で、先住民言語との接触による影響が見られる現象に特化して既調査地域を再訪することも考慮している。平成27年度は現地協力者との交渉可能性によってそのいずれかの調査を選択する予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度、27年度の2年にわたり、スペイン語研究の第一線の研究者を招待し、本研究のこれまでの成果や今後の方針について、意見・評価を聴取することができたが、その点理論面に傾いた。これにより当初予定していた、ラテンアメリカにおけるフィールドワークを実現することが不可能になり、予算の残余が出てしまった。本研究の精度をさらに上げるために、次年度は当初計画していた未調査地点、中米やカリブのドミニカ共和国におけるアンケート調査をさらに推進することになる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の未調査地点におけるアンケート調査およびフィールドワークには、当初2年に重点的に配分した予算の残額を有効に活用する見込みである。具体的には、上記の調査地における現地調査を予定している。これにより、長年にわたる本研究も包括性が確保できると期待される。
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Research Products
(12 results)