2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370460
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
内堀 朝子 日本大学, 生産工学部, 教授 (70366566)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 和美 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (30327671)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本手話 / WH疑問文 / 文末指さし / 文末WH |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は本研究プロジェクト3年間のうち2年目として,WH語を含む日本手話のデータ収集を行ったが,その他に日本手話のWH疑問文にしばしば共起する文末指さしについても,関連するデータを前年度に引き続き収集した。 これらのデータに基づき,特にWH語や文末指さしの現われる文末(節の右端)の統語構造について考察を行った。まず,音声言語におけるWH疑問文に関する先行研究を調査し,特に,Cable(2010)の分析に注目した。Cabe (2010)によると,自然言語ではTlingit語のような音声言語でも見られる通り,[+Q]素性を持つ Force 主要部,すなわち Force[+Q] に選択される Focus[+Q」に,常に Q-particle が移動してくると仮定されている。英語では Q-partile が音形を持っていないが,同様の派生が係わっているとされる。 そこで Cable (2010) に従い,日本手話ではWH疑問文がどのように派生しているかについて,新たな分析を試みた。この分析は,研究代表者内堀と分担者松岡の共同研究として論文にまとめ,H27年度中に学術専門誌に投稿している(査読中)。 具体的には,日本手話のWH語が文末に現われるような疑問文においては,文末WH要素が手型や非手指標識(これらは,音声言語の音形に相当する)を持った Q-partile であり,節の右端に位置する Focus[+Q」主要部に,節内から移動してきたものであることを,日本手話の語一般に見られる形態的特性に基づいて示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本手話におけるWH疑問文の基礎的な分析は進んだが,当初の計画にあった,WH移動に関する局所性を示すデータの調査が進んでいなかった。これは,日本手話に補文構造がほとんど見られず,ネイティブスピーカーから関連するデータが収集できなかったためである。この点に関しては,当初の計画を修正する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では,研究最終年度である今年度には,日本手話のWH疑問文において,移動距離に関わる制限の適用を受けているかどうかなどについて,検証を進める予定であったが,日本手話に補文構造がほぼ見られないことから,この点に関する自然なデータに基づく検証はほぼ不可能となった。そのため,この点においては当初の計画を変更せざるを得ない。 しかしながら,日本手話のWH文の構造が,音声言語とどのような点で共通し,どのような点で異なるかについては,前年度で試みた分析に基づいて当初の計画通りに考察を進め,最終的なまとめを行う予定である。
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Causes of Carryover |
人件費・謝金の費目において,データ調査の対象となった日本手話ネイティブ・スピーカーの方が都合で年度の途中で辞退され,次の方を探すなど,調査回数が予定を大幅に下回ったため。また,研究補助者として想定していた学生・院生などが見つからず,謝金が発生しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
人件費・謝金の費目において,日本手話ネイティブ・スピーカーを対象とする調査回数を増やし,さらに,日本手話通訳者の協力も積極的に得るようにしていく。これにより,繰越分を含めた金額を使用する予定である。
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