2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370472
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
西田 文信 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (40364905)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ブータン王国 / 記述言語学 / 歴史言語学 / ブムタン諸語 / チベット=ビルマ語派 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、研究代表者がこれまで行ってきたマンデビ語の記述研究を発展的に継続し、マンデビ語と系統関係を有すると推定されるブムタン諸語の記述・下位分類を行うものである。本年度は、関連文献の収集及び現地調査を中心に行った。関連文献については、日本邦文・欧文を問わず歴史的関係、人類学関連の文献については収集を行った。現地調査に関しては、ブータン王国において話されるブムタン諸言語について、現地調査を中心とした資料収集を行い、記述言語学的研究を進めた。ブータン渡航時にはゾンカ語開発委員会などブータン国内の関係部署への訪問を行った。現地調査は2014年12月から2015年1月にかけて、ブータン王国トンサ県・ワンディポジャン県及びシェムガン県においておこなった。具体的には、ケン語、ブムタン語の音声及び語彙資料を収集した。これまで代表者による研究の蓄積のあるマンデビ語ツァンカ方言については動詞の統語的振る舞い等の文法調査や自然発話の音声資料を収集した。 研究成果は、論文としては、「ブータンの言語調査について」『秋田県高等学校教育研究会国語部会研究紀要』、「ブロカット語の音韻体系 : ブータン王国ブムタン県ドゥル村言語調査初歩報告』『アルテスリベラレス』、「ブータンにおける少数言語研究の意義」『DRUK』として発表した。また、学会発表としては、「マンデビ語・ブムタン語及びブロカット語における音韻体系の年代差」第4回日本ブータン研究会, 2014年5月11日, 早稲田大学.「ブータン諸語の証拠性について」第17回ブータン勉強会, 2014年6月14日, 岩手大学.「ブムタン県ドゥル村の遊牧民―言語特徴とその背景―」 日本南アジア学会第27回全国大会, 2014年9月28日, 大東文化大学.として発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の点に関して達成できたと考える:[a]既に刊行された周辺諸言語の調査記録の蒐集と整備に関しては、ブムタン諸語関係の言語学及び人類学の学術誌に発表されたブータン関連文献を収集し、またゾンカ語開発委員会刊行の文献を収集した。[b]現地調査(フィールドワーク)に関しては、現地調査による録音資料やテキストなどの言語情報を収集し、トンサ県庁・シェムガン県庁・ワンディポジャン県庁及びゾンカ語開発委員会との研究協力を強化した。[c]資料の整理、分析、記述に関しては、現地調査による録音資料やテキストなどの言語情報を整理し、歴史・社会言語学的方法論の検討をした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度も年末または春季に現地調査を行い、言語データの収集を継続するし、これまでに収集した音声・語彙データのチェックおよび、新たな文法項目の収集と分析を行う。具体的には、ブムタン語及びケン語の系統、類型的特徴、言語使用状況にはじまり、音韻や文法体系の記述、親族名称、色彩語彙などの特殊な語彙にわたるものである。また、談話資料を収集する必要性から、民話の収集も行う。これは、格標識が談話の中で果たす役割や、格標識の省略などを分析する上で必要な資料であると考えたためであり、今後も分析を継続する予定である。研究成果は、「チベット=ビルマ諸語研究会(京都大学)」、「日本南アジア学会」、「ヒマラヤ諸語シンポジウム」等にて報告し、チベット=ビルマ諸語に関心をもつ方々に広く公表し、批判を仰ぐ予定である。またブータン在住のインフォーマントにも継続して研究遂行上の協力を仰ぎ、本研究の充実を図ることとする。その成果については、インターネット上の手段を通じ、適宜意見の交換を実施していく。
|