2014 Fiscal Year Research-status Report
仏語圏アフリカ諸国におけるアフリカ諸言語の書記言語としての発展状況に関する研究
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26370495
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
砂野 幸稔 熊本県立大学, 文学部, 教授 (60187797)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 旧フランス領アフリカ諸国 / アフリカ諸言語 / 書記言語 / セネガル / ウォロフ語 / 出版 / web / フランス語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、旧フランス領アフリカ諸国について、言語政策、教育政策等に関する文献研究を開始し、とくにセネガルにおけるウォロフ語書記文化の動きについて歴史的経過を整理した。また、現代のアフリカ人知識人による言語ナショナリズムを再度その淵源から跡づけるために、植民地期からのフランス側の政策とアフリカ人知識人によるアフリカの言語・文化振興の動きについても検討を行った。 セネガルでは、1950年代にすでにシェク・アンタ・ジョップがフランス語などの植民地宗主国言語に依存しないアフリカの主要言語による書記文化の形成の必要性を主張し、ウォロフ語を現代の科学文化を担い得る言語として整備する可能性を示しており、1970年代にはフランス語作家のセンベーヌ・ウスマンを中心としてウォロフ語による雑誌発行の運動も行われていたが、少数の知識人による動きにとどまっていた。1990年代になるとアフリカ諸言語による識字キャンペーンが展開されるのと相俟って、ウォロフ語をはじめとする主要なアフリカ諸言語による識字テキストなどの出版が行われるようになり、少数ながら一般書として詩集や短編小説が出版されるようになった。とくに1992年に出版されたマーム・ユヌス・ジェンの『第一夫人』、2003年のブバカル・ボリス・ジョップの『猿の子たち』は、小説言語としてのウォロフ語を確立したものとして注目された。 しかし、注目すべきだと思われるのは、出版費用や流通の問題を抱える紙媒体の書籍よりも、2000年代に入ってから飛躍的に増加しつつあるweb上のさまざまなウォロフ語サイトである。かつて街の看板やチャットなどで見られたフランス語式綴り字によるものではなく、ウォロフ語正書法を用いたサイトが数多く見られるようになっている。今後その内容を含め、web上によるウォロフ語の書記言語としての使用状況をより詳細に検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、大学業務の都合などで海外調査は行えなかったが、文献研究を通じてセネガル、マリ、モーリタニア、カメルーンの言語状況、言語政策、教育政策等についての基本的な情報を得、また、セネガルのウォロフ語については、webを利用した情報収集、セネガル等の研究者との情報交換を通じて、ある程度の見通しを持つことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査を予定しているマリ、モーリタニア、カメルーンについては、治安状況が流動的な側面があり、インタビューによる調査については一部パリでの調査に変える可能性があるが、現地研究者とのメール等による連絡を通じて状況を判断し、必要な情報をさまざまな形で獲得する予定である。
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Causes of Carryover |
残額は端数である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度分に加えて使用する。
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