2017 Fiscal Year Annual Research Report
Notitia Linguae Sinicae and the Qing Chinese
Project/Area Number |
26370509
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
千葉 謙悟 中央大学, 経済学部, 准教授 (70386564)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中国語学 / 官話 / 欧文資料 / Notitia Linguae Sinicae / Premare |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はNotitia Linguae SInicaeの文語篇における中国語記述の分析を進めた。中でも声調についての記述は興味深い。プレマールはすでに口語篇の冒頭に於いて「声調は(中国語)の魂である」とまで言い切っており、その習得を非常に重視していた。そして前年度の研究に於いてラテン語の音節の軽重にもとづく詩律と、中国の韻文における平仄が比較されていることを発見したが、これはプレマールの時代を遡ることおよそ120年前、著名なイタリア人来華宣教師マテオ・リッチらによって制定されたイエズス会の中国語ローマ字方案における声調記号の来源であったように思われる。つまりラテン語の初学者向けに与えられる音節の軽重の記号を応用し、最も無標である陰平音節の主母音を表す母音字母上に「ー」という記号を与える。またラテン語初歩において軽音節を示す「V」の記号を入声音節の主母音上に加える。軽音節の符号を用いることは、入声が明清官話において明らかに短促調であったことからして自然であっただろう。問題は陽平・上声・去声をしめす符号(それぞれ「∧」「\」「/」)の来源である。おおまかには二つの説があり、一つは当時の官話の調型の音高をなぞる形であったというもの、もう一つはヨーロッパの特定の言語においてこれらの記号すなわちcircumflex, grave, acuteが持っていたアクセントに基づいたものであったというもの。この重要な点についてはなお検討を要する。
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