2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370515
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
村杉 恵子(斎藤恵子) 南山大学, 外国語学部, 教授 (00239518)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 言語獲得 / 時制 / 主節不定詞 / 生成文法理論 / 句構造 / CP / Truncation / 対照言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は、本プロジェクトの初年度として、先行研究ならびに私自身が行ってきた基礎的な研究をもとに、本プロジェクトの主眼となる時制に関する理論と言語獲得を整理した。 幼児は、どのように統語構造を獲得するのか。これまで、ヨーロッパの諸言語、英語、スワヒリ語、アラビア語、トルコ語、韓国語などの言語から構造の獲得に関する記述がなされ、それらに基づき、刈り取り仮説(Truncation Theory)(Rizzi, 1993/1994)などの理論的仮説が提案されてきた。本プロジェクトは、これらの言語の獲得事実を精査し、日本語を母語とする幼児の特徴と比較し、膠着語であるからこそ示すことのできる新たなデータを検討した。特に幼児が構造を獲得する中途の段階で、構造を刈り取る段階があるという仮説の有効性を検証し、発展させた。 本年度は、一見時制の表示が見えにくい特徴をもつ言語の中から、中国語に注目し、幼児の主節不定詞と思われる現象が、英語のそれと酷似するという事実を整理し、それらと日本語の記述的事実とを比較検討することにより、幼児の構造の初期の段階についての一般化と刈り取り仮説を発展させた理論的説明を試みた。研究成果の一部は、みみずく舎より出版した「ことばとこころ」の中でも言及し、他の言語現象との関連にも触れた。 さらに2015年度に続く研究として、主節不定詞現象と移動操作に関わる幼児の言語獲得について、国立国語研究所の20世紀に得られた成果を詳細に調査した。20世紀後半、国立国語研究所は大久保愛氏の研究をはじめとした膨大なデータベースを整理し、出版している。本プロジェクトでは、それらのデータベースと他のデータとの対照研究を行い、精査し、それらを、現在の言語理論のもとで捉え直す試みを行った。この成果は、国立国語研究所プロジェクトの一部としても口頭発表ならびに研究論文としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2014年度は本プロジェクトの1年目ではあったが、編集者の迅速な対応に恵まれ、時制に関する文法とその獲得に関して研究を進め、たとえば、以下に示す論文や著書においてその成果をまとめることができた。
1."Ne-attachment (Ne-tuke) on the Truncated Sentences” Inquiries into Linguistic Theory and Language Acquisition (CISCL PRESS)2014/06 pp.145-156 (全238p) 2.「ことばとこころ - 入門 心理言語学」 みみずく舎(発行)医学評論社(発売)2014/10/30 A5 ,200p. 3."N'-Ellipsis and the Structure of Noun Phrases in Chinese and Japanese" Japanese Syntax in Comparative Perspective (Oxford University Press)2014/5/29pp.1-49. (全335p) 4."Root Infinitive Analogues in Child Chinese and Japanese." Chinese Syntax in a Cross-Linguistic Perspective (Oxford University Press)2015/01pp.375-398 (全460p)
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度(平成27年度)は、先行研究や自分自身の研究について大所高所から再度見直し、その成果を口頭発表ならびに論文としてまとめていきたい。また、オノマトペなどの言語獲得初期にあらわれる言語現象が、どのように、句構造を伴って言語化され、時制を表示されるようになるのかについて、刈り取り仮説を発展させた新たな視点から検討する予定である。
主節不定詞現象は、一定の特徴をもつ言語現象として知られている。今後は、日本語ならではの特徴に鑑みながら、他言語と詳細に比較し、より一般的な特徴を抽出し、それがなぜおきるのか、という理論的問題を追及したい。
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Causes of Carryover |
2014年度は、海外での研究発表よりは、論文ならびに書籍の執筆活動に重きがおかれ、執筆したものについてのコメントや指導をいただいた為の謝金として使用した。 次年度は、国内・海外での資料収集や口頭発表を予定していることから、海外出張にかかる費用として使用するため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度は、執筆活動を続けるとともに、国内・海外での資料収集を活発化させる。2014年度に中国語との比較研究を行ったことから、2015年度では、実際に香港にて研究発表を行い、研究仲間からのコメントを得て、さらに分析内容を発展させる。また国内でも英語学会などで、国内の研究仲間とシンポジウムをおこない、研究を発信し、発展させていきたい。
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