2014 Fiscal Year Research-status Report
近現代日本語彙における「基本語化」現象の記述と類型化
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26370529
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
金 愛蘭 広島大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (90466227)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 正彦 大阪大学, 文学研究科, 教授 (10159676)
田中 牧郎 明治大学, 国際日本学部, 教授 (90217076)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 基本語彙 / 基本語化 / 近現代 / 語彙・意味 / コーパス / 書き言葉 / 類義語・類義体系 / 語種 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近現代日本語の書きことばの語彙において「基本語化」という現象がどのように起きたかを統一的に記述し理論化するための、一般性の高い方法論の枠組みの構築を目的とする。構築する枠組みは、大きく、基本語化の(1)量的な側面の把握と(2)質的な側面の把握のためのものとに分けられる。(1)は基本語彙の範囲を確定し基本語化する語を特定するための計量語彙論的な方法の確立をめざすものであり、(2)は主として語義・語構成機能・文構成機能・文章構成機能の各面から「基本語化」現象の特徴を見出す方法の確立をめざし、あわせて「基本語化」の言語内的・外的な要因について検討するものである。 今年度は、関連概念の整理を行い、本研究の対象の定義について検討した上で、上記(1)については、「対数化特化係数散布度」という新たな指標を開発し、高頻度語彙が「枠組み語」と「素材語」とに分離することを発見した。これにより、基本語彙の分類・構造化が計量的にも可能となり、研究対象を前者とする方向が見出された。また、(2)については、明治大正期の雑誌コーパスを用いた調査と、20世紀後半の通時的新聞コーパスを用いた調査とを行い、前者については、頻度情報をもとに基本語化したことが確実と考えられる漢語76語を抽出し、それらを口語性の強い語・新概念を表す語・抽象概念を表す語の3タイプに分類した。後者については、使用率の増大及び対数化特化係数散布度の減少を指標として、基本語化したと思われる語を抽出し、和語を中心に検討した。このほか、質的な考察として、雑誌コーパスにおける新漢語「拡大」「援助」の基本語化と類義の既存語との関係について記述したほか、通時的新聞コーパスを用いて基本語彙構造における外来語の進出領域に関する調査を行い、新聞において基本語化した外来語の分布域が一部の領域に限定されていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗状況の詳細は「研究業績の概要」に示した通りであるが、基本語化の量的・質的な側面の把握のために、研究代表者および分担者が計画書記載のそれぞれの分担内容を、計画通り順調に進めている。年度はじめは、関連概念の整理を行い、本研究の対象の定義に関する検討など、準備作業を行った。その後は、研究計画書に示した内容に沿って、概ねそれぞれの分担部分を進めた。研究対象の概念整理および使用コーパスの整備に予定より時間を要したため(通時的新聞コーパスと雑誌コーパスの増補改訂)、当初の予定より若干遅れているが、研究の進展に大きな影響はない。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、まず、初年度の研究結果を生かして、計画通りそれぞれの分担内容を進めていく。使用コーパスの整備を継続し、基本語化の質的な側面の把握を中心にした調査・考察・討議を行う予定である。また、最終年度に実施予定の外部に向けての成果発表等の準備も進める予定である。
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Causes of Carryover |
研究対象の概念整理および使用コーパスの整備に予定より時間を要したため(通時的新聞コーパスと雑誌コーパスの増補改訂)。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
該当予算を次年度に繰り越した(データ整理の謝金の計上)。
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Research Products
(14 results)